いざ!マグマ国内へ!
「マグマ国内行く準備終わったし、さっさとアリア取り戻しに出発や」
中間の村から街道を進むこと体感数時間。
そもそも寄り道して人の宝箱を物色するから余計時間がかかってる気もするが…、背に腹は代えられない。
「お、見えてきたで」
開けた高台に着いて凍慈が指差す眼下を見下ろした瞬間。
砂嵐が止み、視界が開けた。地平線の向こうまで続く黄金の砂。
その中に、宝石を散らしたように点在する青。
「……湖?」
「オアシスやな。あれがマグマ国の心臓や」
下りから徐々にその異変に気が付く。
「……………暑い」
体感+10度は上がった気がする。
汗が服の中を湿らせて、喉が渇く。
「マグマ国内に入ったからやろな~」
「え?こんなリアル設定!?」
「いや、ほんまにな…。さっき湧き水くんどいて良かったな…。ま、俺はこれくらいの暑さ余裕やけど…」
そんな事言ってるけどうちわみたいなので仰いでるじゃないか。
しかも弓に氷属性纏わせて背中に担いでるの知ってるんだからな…。
「……うーーーん?」
水分補給をしながら更に街道をすすんで行けば、そこまで大きくない国の入り口へと辿り着いた。
「どうした?」
「いきなり大神殿あるところ着いたな」
地図には“砂漠の都・マグマ”の文字が。
「“今回は”あっさりパートか?」
「???」
都に足を踏み入れれば目の前は露天並ぶ市場。
布を頭に巻いた商人たちがひしめき、香辛料の匂いと甘いフルーツの匂いとが風に乗って流れてくる。
「ゲームでもお腹は空くもんやねんな」
市場の左右には南国の市場のように、香辛料やフルーツが山盛りになって量り売りされていた。
「生きてるんだからそりゃお腹は空くだろ」
そのまま食べ歩き出来そうな果物を購入して食べると、甘くて美味しく、歩いてきた疲れが癒される気がした。
「うまっ…」
「……アリアは、、ん?シゲ、あれ」
「え?」
━遡る事小一時間前━
アリアも同じくマグマ国へと到着していた。
「皇国が我が国へどのような御用でしょう?」
マグマの入り口で完全に止められ、ジェダの兵が「貴様!このかたを」と言ったのをジェダは制止する。
「部下の非礼を詫びたい。この国には争いに来たのではない」
「貴殿方皇国の所業はここ辺境の国にまで轟いております」
「……鑑定を、大神殿にお願いしたく」
ちらっとアリアの方へと視線を少しだけ流す。
「………」
それでも国内へ入れようとはしない。
少しだけ悩んだ様子だったが、ジェダの口が再び動く。
「我はバハムートの騎士、ジェダ・ハンネ・アウゼンハイド。騎士の名誉にかけて、この国には何もしないと誓う」
その宣誓のような言葉を聞いてから入り口の兵士が一人、さっと走り出した。
「大神殿に許可が降りるか確認致します、、お待ち下さい」
━━現在━━
「……アリアは、、ん?シゲ、あれ」
「え?」
凍慈が顎で示した先。
市場の喧騒の向こう、色とりどりの布の隙間から、異質な白と金が見えた。
砂色の街並みに似つかわしくない、磨き上げられた鎧。
規律正しく整列する騎士たち。
そしてその中央に掲げられた紋章旗。
「……あいつらだ」
喉が、ひりつく。
村を焼いたあの鎧。 見間違えるはずがない。
「なんでこんな堂々と……」
「軍が街中で暴れとらん。ってことは」
凍慈が目を細める。
「目的地は別にある」
騎士たちは、街の中央を抜ける石畳の道の先
―― 湖へと続く一本道の入り口に控えていた。
その先に見えるのは、湖の中央に建つ白い大神殿。
水面に揺らぐその姿は、砂漠の中の幻のようだった。
「……神殿?」
「あれが大神殿や。ルビーの大神殿よりはちょい小さいけどな。てか、軍が入ってへん」
確かに。
騎士たちは橋の手前で整列しているだけで、一歩も踏み込んでいない。
「入られへん理由がある、ってことやな」
「……アリアが、あそこに?」
「ま、間違いないやろ」
鼓動が早くなる。
水面を渡る風が、ほんの少しだけ涼しかった。
「行こう!」
「正面突破はアホやぞ」
「わかってるよ」
市場の喧騒に紛れながら、湖へと近づく。 露店の影、荷車の裏、干された布の隙間。
橋のたもとまで来たとき、神殿の方から白装束の神官が数人、慌ただしく動くのが見えた。
そして――
白い外套を纏った、長身の男。
金髪が陽光を受けて光る。
「……ジェダ」
その横に、小柄な少女の姿。
「アリア……!」
「声出すな」
凍慈に腕を引かれ、石柱の陰へ。
ジェダは神官に導かれ、アリアと共に橋を渡っていく。
騎士たちは一歩も動かない。
橋を渡っているのは、ジェダとアリアだけだ。
「軍は入ってないな。神殿側のルールか?」
「じゃあ俺たちも……」
「一般参拝客の顔しとけばいける可能性はある」
ジェダとアリアの背が、神殿の扉の奥へと消える。
巨大な扉が、ゆっくりと閉じた。
重い音が湖面に響く。
「……急ぐぞ」
水面を渡る風が、今度は少しだけ冷たく感じた。




