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勇者に転生したけど理不尽だ  作者: 甘味好き
〜勇者と聖女の旅立ち〜チュートリアル編
12/20

敗けが確定している戦い




「あーあ、イベントはレアもんとれんのがなぁ…」


「さっきからイベントイベントって……」


なんの事かはよくわからないけれど、なんとなーくもう少し言葉はないのか……。


「他に言葉知らんねんからしゃーないやろ~」


そんなやりとりをしている二人をカーバンクルはじっと見つめる。

そしてアリアのクリスタルに入る直前、少しだけ不思議そうに小首を傾げた。

もちろん、二人がそれに気付く事はなかった。



「カーバンクルが、まだ怯えてる…」



アリアがそう言った瞬間だった。



「あー、あかんわ」


「え??」


突如目の前に表示された、“ここから先は物語が大きく進みます。それでも前へ進みますか?”の文字。


「このゲーム、これはメチャ親切な設定やと思う」


「え?どういう??」


「早い話、第一章終了のボスバトルやろな。さーてと。あとはどっちや」


え?今のがボスバトルではない?どういう事??


「進んで良い、んだよね?」


どっち、という二択の不安は一瞬過ったけれど…。


【前へ進みます】のボタンを押した瞬間、もう慣れたが突如流れるアニメーションムービー。




[居たぞー!!例の一行だ~!!!]


森の中から数十人、それ以上の兵士がシゲ達を取り囲んで行く。


[もう逃げられないぞ!!!]


[一点突破してなんとか逃げきる!!]


ムービーでシゲが数人を叩き伏せ、凍慈の弓が放たれた瞬間、稲光が少し離れた場所へズドンと落ちる。


全員の視線が自然とそこへと向き、直後に兵士から大歓声が巻き起こった。


地面に刺さった槍の上に立つ金・白・黒を用いた、他の兵士とは全く異なるデザインの鎧を身に纏った青年。


[彼等がそうか]


肩まである艶やかな金髪。キラキラと硝子水晶のような透き通る美しい碧眼。左耳には透明度の高い両剣水晶が煌めく。

そして俺でも聞いた事のある声(おそらく人気の声優だろう)が場を支配する。


容姿端麗のその男は槍から地面に降り、何か思いふけりながらシゲ達を見つめる。


ハッキリ言える事があるとすれば、彼だけ全てにおいて気合いの入ったキャラだという事。


[我はジェダ・ハンネ・アウゼンハイド]


[アウゼンハイド!??]


[誰も手を出すな。我が一人で片付ける]


そして彼の静止画が挟まり【皇国のダイヤモンド・龍騎士ジェダ】の文字と彼が冑を装着したと同時にバトルが開始された。



「間違いないわ。彼がアウゼンハイド王国の第一王子。噂には聞いてたけど…」


流れるように言ってるところ申し訳ないのだが、どこの国の誰だと?


そんな会話と同時に


「まぁ、あれや。気合い入れてこ。あと、味方が倒れてもアイテムとか使わんでええで。絶対に勝てんから」


「勝てない??」


「レベル、見てみ」


いつもは表示されている敵の名前の横のレベルが、【??】になっていた。


「この闘いはな、RPGお馴染み敗けが確定している戦いや」


「そんなバカな…」


なんでそんなのいれるの?


理不尽過ぎない?わからなかったらアイテムじゃぶじゃぶ使ってたって事?


「条件戦やないとええけどな」


三人がジェダと名乗った龍騎士を取り囲む。


「急所撃ち!」


一番レベルの高い凍慈の技がヒットしカッと黄色く光る。

しかし、よし!クリティカル!と思う暇さえなかった。


ダメージ表記は【0】だ。


「強打!!」


避ける気配もない。当たり前だ。


全員の一番火力のある技は全て【0】


「もう、良いか?龍滅の舞」


その技を受けた時に見えた数字は【9999】


「……嘘だろ」


三人が同時に吹っ飛ばされて、地面に叩き臥せられた。

はじめてHPが0、つまりゲームオーバーと呼ばれる状態になる。もちろん、凍慈曰く絶対に勝てない戦なのでゲームオーバーではないらしいが……。



「この娘は我が預かる」



凍慈の言った意味がわかった気がする。

だって、抵抗する意味すら最初から用意されていなかったのだから。



ゲーム、というものをやりはじめて、はじめて「絶望」した瞬間だった。




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