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勇者に転生したけど理不尽だ  作者: 甘味好き
〜勇者と聖女の旅立ち〜チュートリアル編
11/17

ルビーの神獣




「宝箱出たの合わせてなんぼや?」


一通り城下町散策を済ませて、あらかた目ぼしい物は強奪した。

お金とアイテムと引き換えに、なにか失った気もするけど…。


「4200ルート」


凍慈のススメにより、凍慈が無料拝借した旅人シリーズ。本人曰く、狙われにくいし余裕との事。

アリアは一番やられたら困るのと、俺は初心者だからと今ある一番防御力の高い冒険者シリーズを。


「4200ルートがあっという間に1700ルート…」


「じゃ、全員分の旅立ちの武器も買えそうやな」


「えっっ!?」


350×3が飛んで行く……。


「……残金がっ、、650ルート」


いや、別に装備以外何に使うとかは知らないけど……。


「まだあれは出てへんのか…」


「?」


「料理」


これ以上なにか増やすのやめて貰っても良いですか?






再び王の間へとファストトラベル。


「…装備は整ったようだな」


ほぼ俺が死に物狂いで稼いだお金だったけどね。

経費で出ないってどうなってるんだ。ブラック企業かよ。


「実はルビーのクリスタルを守護するカーバンクルが何やら様子がおかしいと連絡があった。行って様子を見て来てはくれないか?」


え?やだよ、まずは支度の装備で足りなかった分のお金の清算が…


「わかりました、お任せください」



もう、本当に勝手に喋るな俺っっ!!




「まーだ怒っとるんか」


カーバンクルが住むという、カーバンクルの森へと向かう三人。


「怒ってない、、理不尽に呆れてるんだよ…」


「こんなもんやで、まだ今回は親切設計やぞ~」


「…俺は今回がはじめてなの。はじめてだけど理不尽なの」


ぶーぶー文句を言いながら、まぁカーバンクルとやらはどんなのかなと少し期待はして、森の入り口に。

そして再び立ち止まる。アリアと凍慈は気にせず進んで行くが、、一言言わせてほしい。


「なんでまたダンジョンなんだよ……」


「基本的に外は全部ダンジョンや」


え?なにそれ怖い、、それなら満員電車で良いよ…。


「まぁ、あとはレベル上げと宝箱とるためやろな」


またあれするのか、、と、深い溜め息がでた。


「あ、女神像……」


「…女神像、結構近場にあったな。うーん。イベダンか?」


ゴブリンの森よりは少し広いかな、くらいのダンジョン。

すぐに金の女神像と遭遇し、道端の宝箱も2つ。


「…レベルはゴブリンと今合わせて2つ上がっとるし、先に行くか……」



そのまま3人は森の奥へ行くと、さっきまでとはどこか様子が違っていた。


そこでお馴染みのムービーがスタート。


木々がざわめき、風が落ち着かない。マナの流れが、乱れている。


[……嫌な感じやな]


凍慈が弓を構える。

アリアは胸元のクリスタルをそっと押さえた。


森の中央。

淡く光る結界の中に、それはいた。


薄い緑色の、小さな身体。

ウサギのような輪郭。

けれど額には、大きなルビーの宝石。


本来なら、静かに森を守る存在。


――カーバンクル。


だが今は。


その赤い宝石が、濁っている。


身体を包むのは、薄暗い邪気。

瞳は警戒し、爪を立て、侵入者を威嚇していた。


【邪気を帯びた聖獣・カーバンクル】


テロップが表示されると同時にムービーが終了した。




「……守護獣なのに、戦うの!?」


凍慈が小さく頷いてから呟く。


「ゲーム的な話をしたら、マナが減ってる影響や。邪神の復活で世界が不安定になってる」


カーバンクルが跳躍し、鋭い光弾を放つ。

その一撃は重く、森の地面を抉った。


「じゃ、ゴブリンのボスと同じで行くで!」


凍慈は盗むを開始。

こちらもぶん回しと強打を仕掛ける。


「あれ?」


アリアのその小さな疑問のような声。

カーバンクルがアリアに向き直り、光線が飛んで行く。


「危ない!」


シゲがアリアの前に出て受け止め、 反撃の強打を…


だがアリアがその腕をそっと掴んだ。


「……待って」


戦闘中なのに、彼女の声は不思議と静かだった。


「この子、怖がってる」


凍慈が目を細める。


「(あー、そっちか…)」


カーバンクルは吠える。

だがその声は、怒りというより――不安。


赤い宝石が、強く明滅する。


アリアは一歩、前へ出た。


「もう戦わなくて良いよ」


「アリア、危ない」


シゲが止めようとするが、凍慈は首を振る。


「……アリアに任せよか」


アリアは、武器を下ろす。


ゆっくりとしゃがみ込み、両手を広げる。


「大丈夫。怖かったね」


カーバンクルが一瞬、動きを止める。


赤い光が揺れる。


アリアの胸のクリスタルが、柔らかく赤く輝き始める。


言葉ではない。

けれど、確かに通じる“祈り”。


アリアがカーバンクルを優しく抱きしめた。


「もう大丈夫」


その瞬間。


ルビーの光が強く瞬き、

邪気が霧のように消えていく。


森を包むマナが、澄んでいく。


【浄化成功】


カーバンクルの宝石が、本来の透明な輝きを取り戻す。


小さな身体が震え、

やがて、アリアの腕の中で静かに落ち着いた。


邪気は消えた。

暴走は終わった。


カーバンクルは、アリアを見上げる。


そして――


小さく、鳴いた。


それは、攻撃の声ではなく。


信頼の声だった。


【ルビーの神獣・カーバンクルが仲間になりました】


の、テロップが表示される。


凍慈が苦笑する。


「……な、イベダンやって」


シゲも息を吐く。


「イベダンは良くわからないけど…。倒さなくて良かった」


アリアはカーバンクルを抱いたまま、微笑む。


「これから一緒に守ろうね」


ルビーの宝石が、穏やかに輝く。


森は静かになり、

マナの流れが正しく整う。


遠く、どこかで。微かな振動があった。


それは――邪神の気配。


アリアは空を見上げる。


「この子、きっと寂しかったんだよ」


シゲは小さく頷く。


「守るって、大変なんだな」


凍慈は弓を肩に戻す。


「せやな。ほな次、どの宝玉行く?」


森の奥で、

カーバンクルの額のルビーが、優しく光っていた。



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