ルビーの神獣
「宝箱出たの合わせてなんぼや?」
一通り城下町散策を済ませて、あらかた目ぼしい物は強奪した。
お金とアイテムと引き換えに、なにか失った気もするけど…。
「4200ルート」
凍慈のススメにより、凍慈が無料拝借した旅人シリーズ。本人曰く、狙われにくいし余裕との事。
アリアは一番やられたら困るのと、俺は初心者だからと今ある一番防御力の高い冒険者シリーズを。
「4200ルートがあっという間に1700ルート…」
「じゃ、全員分の旅立ちの武器も買えそうやな」
「えっっ!?」
350×3が飛んで行く……。
「……残金がっ、、650ルート」
いや、別に装備以外何に使うとかは知らないけど……。
「まだあれは出てへんのか…」
「?」
「料理」
これ以上なにか増やすのやめて貰っても良いですか?
再び王の間へとファストトラベル。
「…装備は整ったようだな」
ほぼ俺が死に物狂いで稼いだお金だったけどね。
経費で出ないってどうなってるんだ。ブラック企業かよ。
「実はルビーのクリスタルを守護するカーバンクルが何やら様子がおかしいと連絡があった。行って様子を見て来てはくれないか?」
え?やだよ、まずは支度の装備で足りなかった分のお金の清算が…
「わかりました、お任せください」
もう、本当に勝手に喋るな俺っっ!!
「まーだ怒っとるんか」
カーバンクルが住むという、カーバンクルの森へと向かう三人。
「怒ってない、、理不尽に呆れてるんだよ…」
「こんなもんやで、まだ今回は親切設計やぞ~」
「…俺は今回がはじめてなの。はじめてだけど理不尽なの」
ぶーぶー文句を言いながら、まぁカーバンクルとやらはどんなのかなと少し期待はして、森の入り口に。
そして再び立ち止まる。アリアと凍慈は気にせず進んで行くが、、一言言わせてほしい。
「なんでまたダンジョンなんだよ……」
「基本的に外は全部ダンジョンや」
え?なにそれ怖い、、それなら満員電車で良いよ…。
「まぁ、あとはレベル上げと宝箱とるためやろな」
またあれするのか、、と、深い溜め息がでた。
「あ、女神像……」
「…女神像、結構近場にあったな。うーん。イベダンか?」
ゴブリンの森よりは少し広いかな、くらいのダンジョン。
すぐに金の女神像と遭遇し、道端の宝箱も2つ。
「…レベルはゴブリンと今合わせて2つ上がっとるし、先に行くか……」
そのまま3人は森の奥へ行くと、さっきまでとはどこか様子が違っていた。
そこでお馴染みのムービーがスタート。
木々がざわめき、風が落ち着かない。マナの流れが、乱れている。
[……嫌な感じやな]
凍慈が弓を構える。
アリアは胸元のクリスタルをそっと押さえた。
森の中央。
淡く光る結界の中に、それはいた。
薄い緑色の、小さな身体。
ウサギのような輪郭。
けれど額には、大きなルビーの宝石。
本来なら、静かに森を守る存在。
――カーバンクル。
だが今は。
その赤い宝石が、濁っている。
身体を包むのは、薄暗い邪気。
瞳は警戒し、爪を立て、侵入者を威嚇していた。
【邪気を帯びた聖獣・カーバンクル】
テロップが表示されると同時にムービーが終了した。
「……守護獣なのに、戦うの!?」
凍慈が小さく頷いてから呟く。
「ゲーム的な話をしたら、マナが減ってる影響や。邪神の復活で世界が不安定になってる」
カーバンクルが跳躍し、鋭い光弾を放つ。
その一撃は重く、森の地面を抉った。
「じゃ、ゴブリンのボスと同じで行くで!」
凍慈は盗むを開始。
こちらもぶん回しと強打を仕掛ける。
「あれ?」
アリアのその小さな疑問のような声。
カーバンクルがアリアに向き直り、光線が飛んで行く。
「危ない!」
シゲがアリアの前に出て受け止め、 反撃の強打を…
だがアリアがその腕をそっと掴んだ。
「……待って」
戦闘中なのに、彼女の声は不思議と静かだった。
「この子、怖がってる」
凍慈が目を細める。
「(あー、そっちか…)」
カーバンクルは吠える。
だがその声は、怒りというより――不安。
赤い宝石が、強く明滅する。
アリアは一歩、前へ出た。
「もう戦わなくて良いよ」
「アリア、危ない」
シゲが止めようとするが、凍慈は首を振る。
「……アリアに任せよか」
アリアは、武器を下ろす。
ゆっくりとしゃがみ込み、両手を広げる。
「大丈夫。怖かったね」
カーバンクルが一瞬、動きを止める。
赤い光が揺れる。
アリアの胸のクリスタルが、柔らかく赤く輝き始める。
言葉ではない。
けれど、確かに通じる“祈り”。
アリアがカーバンクルを優しく抱きしめた。
「もう大丈夫」
その瞬間。
ルビーの光が強く瞬き、
邪気が霧のように消えていく。
森を包むマナが、澄んでいく。
【浄化成功】
カーバンクルの宝石が、本来の透明な輝きを取り戻す。
小さな身体が震え、
やがて、アリアの腕の中で静かに落ち着いた。
邪気は消えた。
暴走は終わった。
カーバンクルは、アリアを見上げる。
そして――
小さく、鳴いた。
それは、攻撃の声ではなく。
信頼の声だった。
【ルビーの神獣・カーバンクルが仲間になりました】
の、テロップが表示される。
凍慈が苦笑する。
「……な、イベダンやって」
シゲも息を吐く。
「イベダンは良くわからないけど…。倒さなくて良かった」
アリアはカーバンクルを抱いたまま、微笑む。
「これから一緒に守ろうね」
ルビーの宝石が、穏やかに輝く。
森は静かになり、
マナの流れが正しく整う。
遠く、どこかで。微かな振動があった。
それは――邪神の気配。
アリアは空を見上げる。
「この子、きっと寂しかったんだよ」
シゲは小さく頷く。
「守るって、大変なんだな」
凍慈は弓を肩に戻す。
「せやな。ほな次、どの宝玉行く?」
森の奥で、
カーバンクルの額のルビーが、優しく光っていた。




