理不尽な女神との遭遇
「シゲー!この書類今日中に仕上げとけよ!!」
小さい頃からゲーム等に興味が沸かず(親からもゲームは百害あって一利なしと言われていたし)かわりに読書や勉強が好きで、趣味は全てそこに注ぎ込んだ。
そのかいあって、有名な大学へ一発入学。大学4年間もアルバイトと勉強の毎日を過ごし、大手企業へ就職というトントン拍子で人生を謳歌するはずだった。
「了解です」
しかし、就職し配属された部署はどうやらブラック部署だったらしく、毎月のサービス残業は60時間にのぼっていた。
何かの対策なのか、毎日の残業代は2時間は出るのがありがたいなんて思ってしまうくらいには洗脳されている。
「(大丈夫、今月末まで頑張ったら…)」
流石に可笑しいとわかり意見したが逆効果になった。
見切りを付けて今月末に辞める事にした。
勿論そこでも一悶着あったが、弁護士を雇った瞬間すんなり辞めれることになった。
「(あー、なんだ、、頭痛い…眠たい……)」
動機?よく分からない。椅子から床に崩れ落ちるとそのまま目を閉じた。
今は寝ている場合ではない!と目を覚ませば全く見覚えのない景色が広がっていた。
「完全に寝てしまっているのか…、ヤバいな…、書類がまだ終わってない…」
目前に唐突に現れた大画面テレビ。と、その隣にあるのは最新ゲーム機、PP&5だ。確か8万だか9万だかするやつで、転売屋が買い占めて社会問題になっていた。
何がそんなに駆り立てるのか理解不明ではあるが、恐らく最新の六法全書、辞書や参考書を買いたいと思うのと似た気持ちなのだろう。
更にその前に座る後ろ姿だけでも女性とわかるシルエット。
「しかしなんて夢だ…」
はやく目覚めろ目覚めろと呪文を唱えているが、中々目が覚める気配がない。
たぶんあれかな。ちまたで流行っているなんちゃら転生物。
「あーーー!!もう!!またバッドエンドー!!」
コントローラー?らしきものを叩きつける音が響く。
「えっ!?」
「難しいっっ!難易度そろそろ修正しろやー!!何回やってもハッピーエンドコースにならーーーん!!って、あ、来たか」
立ち上がった、いわゆるナイスバディな美しい女神。流行りに乗っかるならあの人は女神だよな?
いやちょっと待て。何考えているんだ馬鹿馬鹿しい。そんな漫画や小説みたいなご都合主義的な話があるわけない。
こんな妄想に近い幻覚まで出てくるなんて相当疲れているにちがいない。
「お主は今先ほど寿命を迎えた」
あ、ダメだ。これは本当に疲れてるわ。間違いない。
有給休暇出そう。却下されるだろうけど法律引っ張り出したら奴らも黙る事がわかったし、うん。
有給休暇だ。MAX残っていたはずだ。
「む?信じてなさそうな顔をしておるな」
「いや、信じてないって…、もうこれ夢だし」
「夢ではない。先ほどお主は、なんじゃっけな。あ、そうだ、過労死。過労死した」
うん待とうか。なんじゃっけって何よ?
あ、そうだって…なんだその取って付けたような理由は。
いくらなんでも適当過ぎないか?
「もういいよ、、まだ書類が終わってないんだ…。はやく目覚めないとマジで会社に泊まる事になる…」
「いや、だからの。もう目覚めないのじゃ」
すっと指差された先を見ると、床に倒れた自分自身の姿が。
丁度、救急隊員に運ばれていく所だ。
「嘘だろ…」
「さて。紹介が遅れたな。私は転生の女神じゃ」
「いや、待って、まだ現実を…」
「お主の事は数日前に知ったのじゃ。産まれてこのかたゲームをして来なかったと書類を見てな。勿体ない!」
貴方は死にました。といきなり言われて現実を直視させられているなか、この女神とやらは何を言い出すんだ。
「なんと勿体ない。ゲームを知らずに死ぬなんて勿体ないが過ぎる!」
というか勿体ないもクソもあるか。今年30歳になったばかりで死んでたまるか。
何か説明をしているがそんな事が耳に入ってくるわけもなく。
「こうみえて自他共に認めるゲーマーでな」
「はぁ」
「と、いう事で、お主にはゲームの楽しさを知ってもらう事も兼ねて」
「え?何??」
「ゲームの世界へ転生して貰おうと思う!」
「??????」
急に何を言い出すんだこの女は。いや、さっきからか。
見た目は素晴らしいが頭の中がヤバいのかも知れない。
やはり仕事のし過ぎで見ている夢なのだろう。そうに違いない。
ゲームなんて微塵の欠片もしたいとは思わなかったが、潜在的にもしかしたらやりたいのかもしれない。
「起きろ、起きるんだ俺」
起きたらゲームするよ、俺が俺自身に誓うよ。
だからはやく目覚めろ。これは俺がゲームをやりたいと思っているという啓示の夢なんだ。
六法全書の新刊が出るから本当はそっちを買って読みたいけれど、今回は毛ほども興味がないゲームで我慢するから。
「では、今私が一番ハマっているゲームの主人公“勇者”へ!行ってらっしゃ~~~い!」
いや、もう夢であってくれ………。




