舞踏会での武闘会はやめて、異世界のやり方で決めようかい?
『第7回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞』参加作品です。
宮廷楽団がドン、ドンとビートを刻み、王女とのダンスを賭けたラップバトルが始まる——。
事の始まりは、王宮の舞踏会。二人の貴族が、王女の手を同時に取ったことだった。
二人が腰の剣に手をかけたその時、バルコニーから王の声が響いた。
「血で広間を汚してはならぬ。知恵をラップバトルで競い決着をつけよ」
王は若き日に異世界の者と旅をしたことがあり、「異世界かぶれ」として知られていた。
こうして、王女とのダンスを賭けて、二人はにらみあった。
ひとりはアイゼン。筋骨隆々の大男だ。騎士の家系である。
もうひとりはハイン。眼鏡をかけた少年だ。大臣の家系である。
舞踏会の参加者が円を作り、二人と王女を囲む。ラップバトルという異世界の文化を知る者は少ない。
アイゼンが口火をきった。
「俺が先にやってきた お前は後にやってきた 俺が先だ お前が後だ 驚いてるな? 王様・異世界・超熱中 俺様・異世界・勉強中」
ビートに乗せ、韻を重ねると、アイゼンはニヤリと笑った。
「確かにあなたは先だった だけどあなたは眼中になかった ずっと王女は僕を見ていた」
ハインはたどたどしく反論した。
「それはお前がお子様だから よほど王女は心配だった よちよち歩きのお坊ちゃま」
アイゼンはハインを覗き込み、煽る。
「いくら図体がデカくても 見えてないのは いないも同じ 王女の世界に あなたはいない」
ハインは見上げ、冷静に返す。
王が手を振り上げると、ビートは止まった。
判定の時である。
周囲は、勝敗を予想しざわめいた。王女の手を取るのは、先に来たアイゼンか。王女が見ていたハインか。
「王女よ、答えるが良い」
王の声に、王女はひと息ついた。
「舞踏会の雰囲気ぶち壊し 二人とダンスは踊らない 私とダンスを踊りたい? 私への想い、聞いてない」
王女は靴先でビートを刻みながら、そっぽを向いた。
アイゼンもハインも、王女のお眼鏡にかなわなかったのだ。
王は立ちあがり、宮廷楽団を見やる。
「よくいった 欲にまみれた者ばかり 王女の相手は務まらぬ。 王家に尽くせる者だけが 王女の手を取る者である。 王国全土の大会で 王女とダンスの相手よ集え」
宮廷楽団のビートに合わせて、王は宣言した。
王宮の観客は歓喜 王女と誰でも踊れる権利 こうして始まる 王国規模のラップバトル




