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痛い




「……なぁに、二人とも。…その顔」


「またフラれましたね」


「クルト!…、お嬢様…」




護衛のクルトと、侍女のベル。

従兄妹ってこんなに似てるの?ってくらい、似ている二人。双子の親から産まれたからかしら。

そうして揃って憐れむように寄越す視線もそっくり。クルトは少し笑っている。物言いといい不敬だけれど。




「…事実だからしょうがないわね…」




見える景色は変わらない。何一つ。

変わり映えのない街並み。帰り道。


ロビンのいない景色が、いつからか当たり前になった。



どうしたらいいだろう。理由になるだろうか。




友人と仲良く(浮気)してるから解消したい、など。




……だめね、あり得ない。それに浮気ではなかったわ。ないのだからいくらわたしに甘いお父様でも通用しない。逆に叱責される。

そしてわたしは理不尽に募らせるのよ。



なぜ?わたしは何もしていない、と。



ーーいっそのことほんとうに、浮気してくれたらいいのに。

男色大いにけっこうだわ。

そうして性悪の本性を思い知ればいい。



そうしたらわたしは、もう夢を見ずに済む。

惨めな思いをせずに、済む。












…………なんて、嫌な女なの。



みっともなくため息を吐く。はしたないけれどクルトとベルしかいないのだもの、かまわないわ。


情けないけれど、かまわない。


疲れたのよ、わたしは。




もうずっと、痛いのよ、ロビン。





「っ、お嬢様…っ」


「ーーあら、」



醜い嫉妬が思考を曇らせる。翳りが何もかも奪ってゆく。



選ばれない、というのがこんなにもつらい。




ベルがあててくれるハンカチがみるみる染みてゆく。クルト、なぜあなたはそんな不満そうな顔をしているの。

いいえ、そうねわかってるわよ。あなたたちはずっと見ていたのだから。

彼が遠くなってゆくのを、一緒に耐えてくれていた。




「すきだったのよ。…いいえ今でも、すきなの。

簡単には捨てられないわ…簡単には、変えられないのよ。今日に賭けてた…わたしを選んでくれたらもう少しがんばろうって、思ってたの」


「…はいっ」


「…」


「……でも、もう、がんばれる気がしないわ……彼が恋しくて眠れない夜を過ごすのじゃなく、…苦しくて眠れない夜なんてもう、…いらない…」




心が狭く、友人関係に悋気を起こす女だと嘲笑さ(笑わ)れたっていいわ。




「ひぐっ」


「あの性悪闇討ちしますか?子息もろとも」


「…物騒な考えはやめてちょうだい…」




耐えられる痛みだと思い込んでいた、わたしの負けでいい。

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