【特集コラム】『ECLIPSE of the THREE REALMS ~三界戦記~』が示したMMORPGの“次なる形”
【特集コラム】『ECLIPSE of the THREE REALMS ~三界戦記~』が示したMMORPGの“次なる形”
かつて隆盛を誇ったMMORPGジャンルは近年、その勢いを大きく失いつつある。
その理由は明確だ。ソーシャルゲームなどの短時間プレイ型のタイトルが主流となった今、一つのゲームに長時間ログインし続けることを前提としたMMORPGの構造そのものが、もはや時代と噛み合わなくなっていたのである。
そんな中、静かに登場したタイトル――『ECLIPSE of the THREE REALMS(通称:エクリプス)』は、MMORPGが抱える課題を逆手に取り、全く新しいアプローチで成功を収めた。
開発は大手パブリッシャーではなく、立ち上げたインディーズ開発スタジオ「■■■■■」。だが、彼らが培った“古き良きMMO”へのリスペクトと、時代に合わせた設計思想が、他の追随を許さない完成度を生み出した。
■「MMO×物語体験」の融合、その新境地
エクリプス最大の特徴は、MMORPGでありながらも、一つの巨大な物語を追体験する構造にある。
Web小説発の人気作『魔王カリスタ転生戦記《焔に抗う者たち》』、この世界観をベースとしながら、ゲームはあくまで「その物語の余白を生きる」ことに重きを置いている。
ただし、本作はIPものにありがちな単なるメディアミックスとは異なる。
主人公である“魔王カリスタ”を除き、ゲームに登場する固有名詞やストーリー構成は、スタジオが独自に再構築したもの。
これは、作者からシェアード・ワールド形式で特例的な許諾によって可能となったものであり、ある種の“共同創作”の試みでもある。
そのため、メディアミックスという扱いでもなく、別IPとして存在している点でも本作の特徴である。
プレイヤーは「転生者」としてこの世界に介入する存在となり、作品とは異なる時間軸、視点で物語に関与していく。
また、NPCは単なる背景ではない。彼らにも“記憶”と“成長”があり、時にはプレイヤー以上に過酷な選択を下す。こうした“自律性”の演出が、プレイヤーに強い没入感を与えている。
■MMOにしてMMOにあらず
ジャンルとしては“MMORPG”とされていながらも、実際のゲーム体験は大きく異なる。
最大の理由は、本作がインディーズスタジオによって開発されているという点にある。
高額なサーバー運用を避けるため、本作はユーザーのデバイス上にゲームデータの大部分を保持する構造を採用。いわば、スマホゲーライクな“擬似MMO”なのだ。
実際、ゲームの基本はソロプレイが中心。ログイン中の他プレイヤーと出会うことはなく、多人数の“気配”だけが漂うMMO体験を提供している。
では、どうやって“MMO感”を演出しているのか。
鍵となるのが、他プレイヤーの“結果”だけを共有するシステムだ。
フィールド上には討伐ログ、建築状況、経済相場といった「痕跡」が世界に反映される。
たとえば、他プレイヤーが倒したボスの影響で、NPCのセリフが変化したり、町にバリケードが張られていたりする。「誰かがこの世界を動かしている」という感覚が、孤独な旅に程よい熱を与えてくれる。
また、最大4人までのフレンド同士によるパーティプレイも可能。パーティメンバーとは一部リアルタイムの連携も可能で、“少人数のマルチ”を通じて戦略性を味わえる設計となっている。
ただし、本作では他パーティとは一切接触できないため、PvP的な干渉や悪質なチート行為は起きにくい。この“緩やかな分離”によって、快適かつ没入感を損なわないオンライン空間が実現しているのだ。
かつてのMMOが持っていた“誰かと世界を共有する感覚”を、今の時代に合った形で再構築した、新しいMMOのかたちだ。
■レトロ回帰か、新時代の夜明けか?
懐かしさと新しさの境界で揺れるMMORPGというジャンル。
エクリプスは、懐古主義でもなければ時代遅れでもない、“MMOの再定義”に挑んだ一つの回答として、確かな足跡を残した。
この先、エクリプスが“新しい当たり前”になるのか、それとも一過性の奇跡に終わるのかは、まだ誰にもわからない。
だが少なくとも、「MMOはもう終わった」と言われた時代に、反旗を翻した存在であることに、疑いの余地はない。
そして今、この“焔に抗う”物語に、また新たなプレイヤーがログインしていく――。
次回は、『ECLIPSE of the THREE REALMS』の代表兼ディレクター・K氏に独占インタビュー。開発秘話や今後の展望を語っていただきます!
2025/08/01 予約枠から全文公開 へ




