1.決断した後
クロウは――選んだ。
原作のあの“会食イベント”を、ほぼ忠実になぞるという選択をした、クロウ。
本番はこれからだった。
この先は、ただの再現ごっこじゃ済まない。
ここからは、反逆を現実のものにしなければならない。
転生者としての今のカリスタなら、この状況でもア・イチの非礼を許すだろう。
だが、クロウには――迷いがなかった。
『偽りの主に、従う義理もなし』
原作のあの名台詞。かつてアニメで聞いた声を真似て、あえて抑えた口調で演じた。
余裕が出てきて勢いで演じたが、言い終えてから、全身が震えていた。
……まあ、感傷に浸ってる暇はない。
まずは向こうから来るであろう、メアリー・フラン。
そのあとに、エーヨンあたりか。
後、手下のスライムたちに指示を出す必要がある。
さらに、魔族たちの間で賛同を集める必要もある。
この流れは原作に書かれているが、そこでの会話は描かれていない。
何しろ、原作は魔王カリスタの物語。
だからこそ、やることは山積み。原作通りなのに、原作を頼ることはできない。
なのに、どうしてだろう。面倒なこと以上に、結末は自分の“死”に向けた舞台だっていうのに、心が踊っている。
散々ファンに“原作4巻で伏線回収するマン”とネタにされる、あのイベントの当事者なのに。その役目が、今まさに自分の肩にかかっている。
――それでも、今のクロウには確信があった。
物語は、ア・イチを中心に回ってなんかいない。
そもそも、“意思”を持って選び取った時点で、物語の主人公は――
自分でしか、あり得ないのだから。




