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外伝その2.長宗我部家の日常~移りゆく景色と色褪せぬ思い出~

 父は厳しい人であった。


 小さい頃は少しの事で怒られては母に泣きついており、次第に父が苦手になって母はアタシを外へ連れていくようになる。

 朝は幼稚園があるのでまだ日の登らない早朝にアタシと母は近所を散歩し、帰る頃には幼稚園バスが迎えに来るので事前に準備していた荷物を持って出掛けるだけにしておき、なるべく父と顔を合わせないようにしていた。


 この早朝の散歩が好きだった。

 家の前の掃除している人や愛犬を散歩させている人達と挨拶したり少し立ち話をする。これだけなのだが地域の人達との繋がりを感じられたし、町内でのイベントの時は何かその人達から良くしてもらって、出店なんかを開いていればそこの食べ物をもらえたりもした。

 何より優しくいつも守ってくれた母と一緒にいる事が好きだった。


 その母が亡くなったのはアタシが小学校に入る前の事だった。

 学生時代は運動部で"鉄人"と言われるくらい母は体が丈夫だったが、アタシを出産した頃ぐらいだったか体調を崩す事が多くなり薬を服用するようになっていた。


 早朝の散歩は体に良いと本人は言っていたがアタシが早朝に無理に付き合わせて体調を悪化させたのではないかと子供心ながらに思っていた。

 母が早く亡くなってしまったのはアタシの責任だ……

 そう考えていたのは父も同じだったようで、自分が厳しくしていなければ娘も私から距離を置こうとしなかっただろう、こうなってしまったのは私の責任だといつかアタシへ言ってくれたことがあった。


 早朝の散歩はそれ以来やめた。

 1人だと道に迷ったりして危ないと言う理由もあったが父がアタシに対して頭ごなしに注意してこなくなった事が大きく、厳しいが全てに理由があり理不尽な怒り方などはなくなって父への印象は恐怖から尊敬のような気持ちへ変わっていったからだ。


 朝はアラームをかけずとも自然と目が覚めて動きやすい服装へ着替え、背中には小さめのバッグを背負い軽いストレッチをした後ランニングを始める。

 中学で運動部へ入り体力作りの一環としてこの早朝ランニングを始めた。

 最初コースは母と共に歩いていた時よりも少し長めに設定していたが、運動部に所属していない今は昔と同じくらいの無理のない距離へ変更している。


「おはようちなみちゃん、相変わらず元気ね」

 近所のおばさんが家の前の掃除をしながら挨拶をしてくれた。

 この人と挨拶をし軽く話した後に何か頂くというのが定番の流れになっており、アタシ自身少し楽しみにしている所もあるだろう。

「相変わらずお父さんへお弁当作ってるの?」

「はい。父は仕事を頑張ってくれてますから……アタシには早起きしてお弁当とか夕食作ったりぐらいしか恩返しできませんから。それに料理するのも好きですし」

「本当いい子ねえ、孫のお嫁さんにほしいくらいだわあ……そうそうこれ家の家庭菜園で取れたヤツ持ってって」

 ビニール袋に入れられたきゅうりを受け取ると、持参してきたバッグへ入れてランニングを再開する。


 しばらく歩くとシルバーダップルのダックスをつれた方が散歩していた。

 母と散歩していた時は散歩デビューしたばかりで身を震わせるばかりだったのに今は堂々と散歩をしている。

 10歳を過ぎているだろうに元気で、アタシを見かけるといつも構ってくれる人だと覚えているようで駆け寄ってきて甘えてくる。

 可愛い……この子と会いたいからランニングを辞められないと言っても過言ではない。


 そしてしばらくして家の近くの河川敷で少し休憩するのもいつもの流れ。

 アタシは下に落ちている平べったい石を探してそれを右手に持ち、流れゆく川をじっと見てから軽く目を閉じると過去の思い出が蘇ってくる。

『ねぇ"水切り"っての上手くできない!ねーねー!』

『ちなみも練習すれば上手くなれるわよ。ママの見てなさいー……それっ!』

『すごーい!7回ぐらい石がチャポチャポって水の上跳ねた!』

『ママ運動神経いいから!ちなみも運動神経いいからすぐできるようになってママよりも上手くなれるわよ!』

 閉じていた目を開け、スっとサイドスローのピッチャーのように構え持っている石を川へ水平になるよう投げる。

 放たれた石は水面を音を立て跳ねる、1回2回……

「今日は10回か……お母さんの言った通り練習すれば上手くなるもんだね……」

 1人呟いて帰路につく。


 家に帰ると貰ってきた"戦利品"を冷蔵庫へ入れ、軽くシャワーを浴びてからお弁当を作る。

「おはよう、いつもすまんな」

「お父さんおはよう、おばあちゃんからきゅうりもらったよ」

「あのおばあちゃん元気だなー、そういえばちなみ今度学校の子達と旅行行くんだろ?おばあちゃんへ何かお土産買ってきなさい」

「そうするつもりだったよ、はいこれお弁当。気を付けてね」

 父は弁当を受け取りアタシに軽く手を挙げ出社した。


 よし、アタシも学校行く準備するかな!

 夏休みに入って部活をする時も基本学校指定のジャージか制服でなければならず、シャワーを浴びた後は基本制服に着替えエプロンを付けて弁当を作って父を見送り身支度、これがいつものアタシのルーティーンになっている。

 Yutterを見ると先生が作った趣味活動部の公式アカウントが出来ており、次は旅行へ行くことが明記されたツブヤキがあり部員の皆はそれにコメントを残している。


『旅行楽しみ!どこ行こうかな!』

『部員の皆と旅行なんてテンションあがるわ~』

『私も楽しみなんだけど帰るまでが旅行なんだから皆ハメ外し過ぎないようにね!』

『誰かと……出かけるの……久々……楽しみ……うへへ……』

 見ていると個性が出てるなと思う。

 いつの間にか趣味活動部も部員が5人に顧問まで出来た……これも梓が頑張ってくれたおかげだ。

「ありがとう梓……」

 独り言を呟きアタシは家を飛び出し学校へと向かう。そして登校中、ふと周りを見ると変化がある事に気が付く。


 建て替えられる家や舗装される道路、住んでいる人達も変わっていくのだ。

 でも変わらない所もある。あのおばあちゃんや犬、そして河川敷から見る川の流れ……

 移りゆく景色の中を駆け抜けアタシはこれからもこの"趣味"を続けていくだろう。母と辿った思い出と共に……

本日の趣味について長宗我部 ちなみさんからメッセージがありました。

【歩くのは健康にいいが歩きすぎるのも体に毒だ!

余談だが犬を触る時は上からではなく下から手を出すようにしよう、叩かれると思って怯えてしまう子もいるからな!

…はぁ、犬飼いたいよ…】

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