第4いいよ! 廃部の危機!?顧問の先生を探そう!~ドライブ(仮)編~
パン屋でのバイトが忙しかったけど最近になり新しい人が入って来てくれて、やっと誘われていた部活にも行けることに。
彼女達が来てから数週間経ってしまい申し訳なかったけど、やっと顔を出せると思うと気持ちが昂ってしまい軽くスキップをしながら趣味活動部の看板が掲げてある1-1教室へ。
扉を開けると4つ机が向かい合わせになっており、私の席は英玲奈の向かい側で隣にはちなみがいた。
「バイト忙しくて来れなかったけど今日から結構来れると思うからよろしくねみんな!」
「はい!アタシこそよろしくお願いします」
「よろしゅうです、ふー先輩」
ふー先輩って私の事かな?と少し疑問に思ったがそう言われる事もたまにあったのでスルーし彼女らに頭を下げた。
しばらく話していると勢いよく教室の扉がガラガラっと開いたのでそっちを見ると梓がショックを受けたような顔で立ち尽くしていた。
どうしたのかなと思っていると、とぼとぼと歩いてきて自分の机の前に立ちドンっと机に両手を置いて言い放った。
「部活、なくなっちゃう!」
その発言の後しばらくの沈黙が流れる中私は心の中でこう思っていた。私今日始めて部活来ていきなり廃部になるの?と……
詳しく話しを聞くと部活が増えすぎて空き教室がすくなくなり、【部員が5人以下・顧問の先生がいない部活は1ヶ月以内にどちらかの条件を満たさないと解散】させられるそうで該当する部活が多数あり今は顧問の先生探しや、兼任や幽霊部員でいいので誰かを部活に入れようと皆動き回っているらしい。
この先どうしようかと皆で話し合いをする事に。
「1番現実的なんは新しい部員を入れることやけど、誰かおるんかな?」
「幽霊部員とかはアタシなんか嫌だな、それなら潔く無くなって部活じゃなくてもこのメンバーで集まって活動したい」
「ちなみの言う通りかも、私もその意見に賛成ね。
だから本格的に部活に参加してくれる人を探すか顧問を探すだけど……とりあえず部長である梓の意見は?」
皆が悩んでいるので梓に意見を求めるとしばらく黙って腕組みをしていたが、「手分けして何とかしよう!」と言う意見が出てきた。
私と英玲奈は新しい部員探し、梓とちなみが顧問の先生を探すと言うものだったがほとんどの生徒が部活に入っており、顧問の先生もまた同様であった。
そうこうしている内に部活がなくなる期限まであと3日になっていた。新しい顧問も見つけられず、部員もほぼ決まっていたりバイトで忙しい人が多く新しい部員は見つからなかった。
部室に集まった4人は絶望感で口数が少なくなっている。
「気持ちが沈む……梓ごめんね、私達何もできなくて……」
「いいんだよ、みんな頑張ってくれたし!それだけで嬉しくて……私……私……」
梓の目がウルウルしている。元気の塊みたいな子なのに……彼女のこんな顔初めて見たかもしれない。
ふと横を見てみるとちなみがなにか呟いていてハッとした表情を浮かべた。
「そうだ、全員の先生にお願いしたと思ってたけど1人当たってない先生いたの思い出したよ!」
「それって……ぐすっ……誰……?」
「社会の担当してる先生だよ!あの人授業終わったらどこ行ってるかわからないけど職員室とかあんまり居ないから存在忘れてた!
しまった……あの人とは小さい時から結構交流あったのに……とりあえず手分けして探してみよう!」
ちなみの閃きに全てを託そうと私は梓にハンカチを渡して涙を拭かせると皆で手分けして先生を探すことに。そして数十分後、ちなみから『屋上にいるから来て!』とメッセージがあり屋上に皆集合した。
「お願いします!!」
「皆さんどうされたのですか?だいたいこのメンバーを見れば何を言いに来たのかわかりますが……」
4人に頭を下げられ少し困惑の表情を見せている先生だったが、今回の部活騒動で事情はなんとなく察してくれたようで顧問をして欲しいから来たのだなとわかってくれていた。
「個人的な理由であまり顧問をしたくなくて、職員室にいると他の生徒から顧問を頼まれると思い最近は屋上を特別に解放してもらっていたのですがまさか見つかるとは……まぁ見つかってしまいましたし、ちなみが言っても聞かないのは知っておりますし。
……いいですよ。"顧問"、私でよければ受けましょう」
その言葉を聞いて私達は各々喜んでおり、梓は英玲奈と抱き合ってたり、私もちなみとぴょんぴょん跳ねて喜びを表現していた。
顧問になってくれた金井 佳奈先生は30後半の社会の授業を担当している先生で、古風な感じで落ち着きがあり、常に敬語で話す所も気品を感じ、外見も美人で縮毛矯正をかけたロングヘアの黒髪も美しく生徒から人気があった。
ちなみは前から学校外でも家族ぐるみで交流があったそうだが近くに居すぎて先生であることをすっかり忘れてしまっていたようだ。
これで顧問が出来て廃部は免れる事が出来たのだ。
「改めまして私達の部にも顧問が出来ました!」
後日、金井先生を部室へ招き、梓がそう発表すると皆から歓声と拍手が湧きあがった。
先生は英玲奈の隣の席になり、座る姿も姿勢がよく綺麗だった。
「趣味活動部の顧問になりました金井 佳奈と申します。皆様のお力になれるよう努力してまいりますのでよろしくお願いいたします」
ゆったりした話し方が聞いていて心地いい、そんな先生の自己紹介を聞いてまた拍手が鳴る。
事前に部活の内容はちなみから聞いていたので楽しそうな部活だと言う印象があったらしく、急な頼みでも受けてくれたのにはそういう理由があったみたいだ。
「かな姉……じゃなかった、金井先生は何か趣味とかあるんでしたっけ?」
「ちなみ、いつも通り"かな姉"でよろしいですよ。皆様も遠慮なくそうお呼びください。
私の趣味はドライブですかね?最近車検が切れたので大型車を購入しました。車は全く詳しくないのですが……」
「おー、かっこいい!"かな姉先生"見せて見せてー!」
「梓、かな姉先生って……」
梓にツッコミを入れたが私も見てみたい、そう伝えると快く快諾してくれて駐車場にある車まで案内してくれた。
外見は白く、車には詳しくない人でも一度は聞いたことがある大型車で7人乗りだそうだ。
キーを押すと後部座席の扉が自動で開き一同「おー」と声をあげていた。
車内は広く座席も足を置くところがあり、座席も倒すと寝られるようになり英玲奈が最初試したら数分後寝ているぐらい心地よい。
後ろの天井には小さなモニターがあり、そこでテレビを見たり持ち込んだ映画など見れるそうで少し感動してかな姉に良かったと伝えることにした。
「凄いです!内装も高級感あって良いですねー」
「ありがとうございます。私1人身の故、軽自動車でも良かったのですが試乗したら忘れられなくなってしまい購入してしまったのですよ。
購入した後、顧問になる気もないのにこんな大型車必要だったかと時折そう思う事があったのですが……皆さんの様子を見ていると買って正解だと感じました」
口元を隠してクスクスと笑っているのを見てこの人の大人の魅力を改めて感じていると、梓が助手席に乗って先生にお願いしていた。
「かな姉先生、いつか私達と一緒に旅行行きませんか?夏休みももうちょいですし!」
「そうですね……いいですよ、仕事が空いていたら皆さんで休みを合わせて行くことにしましょう」
こうして顧問も決まり旅行もいつか行くことが決定した。
今回の部活騒動で大半の部活が無くなったそうだ。今こうして部活を続けられるのも金井先生……いや、"かな姉"のおかげだ。
何故顧問をやりたくなかったのかは今はわからないがいつか聞いてみようと思う。趣味だけでなく個人の悩みも共有し解決する……それが"趣味活動部"第2の活動内容であると個人的には考えているからだ。
本日の趣味について金井 佳奈さんからメッセージがありました。
【車の免許証の1番最後の数字は免許証を再発行した数です。
ちなみに私は若かりし頃免許証を投げて遊んでいたらどこかに紛失して"1"になっております】