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一
彼は、見たことがないほど緊張している様子だった。
へらへらくにゃくにゃとよく動き、よく曲がる唇の線を今はただ一本にして、机を見ている。
私の目を見つめ、私の顔を見つめ、彼の瞳に焼きついた自身の姿を何度眺めたのか、私は覚えていない。
──口を開いた。
埒が開かないと、思ったから。
なぜここにいるのか尋ねたけれど、君がいるからだと彼自身のようにふわふわしていて、曖昧で、不明瞭な輪郭を持つ回答しか出てこない。
そんなことを聞きたいのではなくて、なぜかと聞いているのだけど。
ぐらぐらと彼の瞳が動く。
──友達。
確かに、彼の乾燥した唇はそう動いた。
声には乗っていなかったけれど。
友達?
やや時間をおいて、自分で言ったくせに戸惑うようにして頷いてみせるが、その単語だけではなんの情報も得られない。
いや、まさか。
ひとつだけ、可能性として浮かび上がる彼の言い分とやらは、私の中では最もないものだ。
私がそう考えているとは知らず、彼はもう一度唇を直線上に引き締め、机を見つめ、そして私を見つめた。