プロローグ『ミハテの子』
初めまして、御宅拓と申します。
なんとなく他の方々の読んでたりすると自分も書きたくなりまして、思いつきも含めて書き始めてしまいました。拙い文章かもしれませんが、応援してくださるとうれしいです。
地図にも記載されていない辺境の地に、“ミハテ族”は住んでいた。
彼らの存在を知る者は数少なく、傍から見ればただの人間に過ぎない。しかし、ミハテ族には稀有な能力と特徴的な髪色があった。
この世で最も神聖かつ偉大な存在である竜の爪や牙を物ともしない強靭な肉体に、あらゆる怪我やダメージを一身に反映させる能力……。
そんな彼らを象徴する一番の特徴はなんといっても、銀色の混じった黒髪だった。知る者こそはその髪色を目にしただけで理解するが、そうでない者には目立たない。
――しかし、そんなミハテ族は十年前に滅んだ。
それはまさしく一夜にして起きた悲劇だった。
“龍神”と名乗る若き青年と“黒鬼”による襲撃。たった二人の存在を前に、ミハテ族は成す術もなく一人一人と殺された。
老若男女関係なく倒れていく最中、ある夫婦は一人のまだ幼い少年を連れて祠へ向かった。そこは彼らミハテ族が信仰する“犠神様”と呼ばれる神が祀られた神聖な祠だった。
『あなた、本当に大丈夫なの!?』
『ミハテの希望はもうこの子しか居ない。この祠は犠神様がお守りしてくださるはずだ』
『だからって気絶させて私たちの勝手でここへ“封印”するだなんてあんまりよ……! 確かにこの子は私たちと違って強い魔力を持っているのはわかるし、それを感知されるかもしれない状況もわかる。でも一度封印したら、いつ解けるかなんてわからない……!』
『……いいや、その時は必ず来る。これはただの迷走かもしれないが、どのみち戻ってもこの子が生き延びる保証はゼロだ』
涙を流し事実から目を背ける母親と、最善を尽くした判断を実行する父親。
もはや村は壊滅状態、今すぐにでもやらなければいつ察知されるかもわからない。父親は封印の儀式を行うと、少年の身体は鎖で紡がれ、壁に張り付けられる。
この封印は身体の成長こそ止めることはできないが、必要とされるあらゆるものを制限する。食べることも、飲むことも不要。
父親は儀式を終えると最後に手紙を書き記し、封筒にしまいこみ少年の膝の上に置いた。
『お前を必要とした誰かが此処へ来たとき、封印は解けるはずだ。それまでは不自由だが、これもすべて致し方ないことだ。……ミハテの意志を頼んだぞ、“ブレッド”』
身勝手な封印とはいえ、出来る限りの未来は託した。
父親は背を向け、母親と共にその祠から姿を消していく。
『父さん、母さん……いかないで……』
微かに意識を戻した少年が消えゆく両親に向けて放った最後の一言は、幼い故に出た悲しみと寂しさの言葉だった――。




