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五話 鏡の正面

「きゃー!」

「逃げろー!」


 普段は賑わうはずの天神の風景は、殺伐とした空気に呑まれていた。ビル群は崩壊し、整備されているはずの道路は地割れしており、とても人が立ち寄れない場所になっていた。そんな道路の真ん中に一人の男が立っていた。


「福岡が堕ちるのも時間の問題だな。これで俺も妖将(ようしょう)になれるはずだ。」


 漆黒の着物をはためかせ、土煙に呑まれていく。



 俺は、福岡陰陽署の会議室にいた。


「君達も既に知っているだろうが、先程、天神付近にて妖怪の襲撃があった。よって、只今より天神防衛作戦を発令する。」


 と、司令部の男が口火を切ると同時に、皆の固唾を呑む音が聞こえた気がした。


「現在確認した妖怪は四名、危険度はAと予想している。三人一組を四組作り、各妖怪の掃討にあたってもらう。それぞれリーダーは三ツ星が担当する。」


 作戦の概要を聞き逃さないよう耳を傾けながら隣に座る水瀬に小声で話しかける。


「なぁ、そういえば水瀬って何星なんだ?」

「俺は二ツ星だな。もしかしたら同じチームかもな。」



「今回リーダーを務めさせてもらう矢島です。よろしく。」

「二ツ星、野倉です。」

「一ツ星、山本です。よろしくお願いします。」


(結局、水瀬とは別チームになったな。まあ、あいつなら大丈夫か。)


 水瀬はまだ二ツ星らしいが、妖怪の俺から見てもかなりセンスがある方だと思う。だから、心配はしてやらない。


「いきなり、こんな大役任されて大変だね、俺が護るから安心してね。」


 矢島が、少し緊張気味の野倉を見て話しかけていた。頼りがいのある優しいお兄さんって感じだ。八島は再度作戦内容を確認し、俺達二人に呼びかける。


「俺達の相手は黒の着物着た男みたいだな。よし、気張っていこう!」



 福岡陰陽署はPayPayドームから徒歩10分以内の距離にあるため、襲撃にあった場所までの時間は掛からなかった。


 道路に散らばった瓦礫を飛び越え、進んだ先に着物の男を見つけた。


「目標確認した、俺が前に出るから二人は援護を頼む!」


 矢島は走るスピードを上げ、男に接近する。


「何者だ。」

「【丙業火(へいごうか)】」


 札を口元に添え、大きく息を吹きかける。すると、札から炎が吹き上がり、さながら火炎放射の如く男へと注がれる。


「弱い。」


 妖怪の正面に人ひとり覆ってしまうほどの鏡が生み出され、業火と衝突する。数秒、業火が降り注がれた後、損傷ひとつない鏡がそこにはあった。


「逃げろ!」


 俺はただならぬ悪寒を感じ、咄嗟に矢島に向け叫ぶ。


「【割鏡(われかがみ)】」


 男が鏡を叩き割ると、バリンッという音と共に矢島の身体がまるで硝子を割ってしまったかのように砕け落ちた。


(死んだ…)


 何が起こったのかまるで理解出来なかった。ただ、先程まで人の形を成していた矢島の身体がバラバラに砕け落ちていた。


「あんなの勝てるわけないだろ!俺は無理だ!」


 野倉は叫び、男から背を向けて一目散に逃げ出した。


「逃がすわけないだろ。【割鏡】」


 新たに正面に生み出した鏡を叩き割ると、野倉の身体も硝子のように砕け落ちた。


(最悪だ、まだ奴の手の内を把握しきれていないのに。)


 一瞬、気が動転してしまいそうになったが、深呼吸し、少し離れた位置にいる男を見据え、問いかける。


「お前、雲外鏡だろ。」

「よく分かったな。」

「鏡を用いた妖怪なんて限られるからな。」

「正体がバレたところで、攻撃から逃れることは不可能だ。【割鏡】」

「【憑依刀・古籠火】」

 刀から燃え上がる火で全身を覆い隠す。雲外鏡の生み出した鏡が叩き割れる音がする。俺の身体は傷一つ無かった。


「やっぱりな、鏡に映らなければ攻撃は受けない。」

「私もまだまだ力不足だな。」




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