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四話 入隊

「履修登録は済んだか?」

「当たり前だろ。明日から授業だ。」

「何すんの?」

「妖力基礎だ。」

「うわっなっつー、そんなんあったわ!忘れてた   ー。」


(こいつ外面は良いのに、残念な奴だ。)


 試験合格から一週間後、俺は通っていた高校を退学し、陰陽署の寮に入ることにした。すずめ姉さんとわらしにしばらく会えなくなるのは少しさみしいが我慢だ。


「どうでもいいんだけどよ、高校に友達とかいなかったの?ほら、呆気なく退学しちゃったし、思い入れとか?」

「世間に溶け込むために通ってただけだから思い入れなんてねーよ。てか、なんでお前俺の部屋にいんの?」

「ん、そりゃあ山ン本が一人じゃじゃ不安だと思って。」

「そりゃどーも。」


 寮は一人一部屋用意されており、食堂、浴場と至れり尽くせりで驚いた。


「水瀬は授業ねーのか?」

「学校じゃねーんだから。基礎授業があるだけで後は個人学習さ。半年もあれば基礎授業全部終わるよ。」


(自動車学校みたいだな。)


「じゃ、俺もう行くけど、くれぐれも妖怪だってバレんなよ。」


 そう残して、水瀬は俺の部屋を後にした。水瀬が居なくなると途端に部屋が広く感じる。いい意味でも悪い意味でも。



「じゃあ、今配った札に妖力を流し込んでみて。」


 妖力とは何かを学んだ後、妖力属性を知るために何やら印が書き込まれた札が生徒全員に配られた。


「札に苔が生えたら木、燃えたら火、崩れたら土、硬質化したら金、濡れたら水だ。分かったかー。」


(さてどうしたものか、俺は妖怪だから俗姓とか無いんだけど、古籠火(ころうか)の力を借りるか。)


 俺は、周りの目を盗み、刀を顕現させる。


「【憑依刀・古籠火】」


 すると、刀がゆらゆらと燃えだし、かざした札に燃え移った。


「おっ、お前は火属性か。こんなに札が燃えるの見た事ねぇ。こりゃ将来大物だな!」


(え、そうなの?目立つのはまずいぞ。)


 俺はバレないように息を吹きかけ、燃える火を消火する。


 その後も、妖札の行使や妖札に印を書く授業でうっかり人間以上の妖力を出してしまわないように調整して過ごした。



――三日後


「いやー、疲れた。」


 自分の部屋へと戻った俺は部屋に入って早々に床に突っ伏してしまった。


「針に糸を通してる気分だ。けど、今日で全ての講義は受けたからやっと任務に出れる。てか、水瀬の奴、最近会ってないな。久々に顔出してやるか。」


授業の疲れで重くなった身体をどうにか起こし、水瀬のいる部屋へと歩き出した。



「水瀬いるかー?」


 インターホンを鳴らして数秒、ドアがゆっくりと開き、水瀬が顔を出した。


「あれ?山ン本じゃん。どうした?」

「最近見てないと思ってな。講義も終わったところだし丁度いいかなって。」

「なるほどな。いやー、俺こう見えて忙しいのよね。なんせ、あの安倍晴明の子孫なのだから!」

「は?」


 俺は驚きのあまり、頭の中で水瀬の言葉がぐるぐると回る。


「なんか、陰陽署本部に保管されてる安倍晴明が使っていたとされる札があるんだけど、この前俺が近づいたら僅かに反応したらしくてさ。調査の結果、遠い祖先に阿倍野がいるってよ。」

「待ってくれ、全然内容が理解できない。お前、それって隔離されたりとかないか?大丈夫か?」

「大丈夫だよ。俺まだ実力が伴ってないし、兄貴の方が注目されてるしな。」

「兄さん居たのかよ。お前のこと知らないことだらけでびっくりだわ。」

「兄貴も今まで札を見に行った事ないから気づかなかったみたいだわ。」

「じゃあ、なんでお前は見れたんだよ。」

「陰陽展の抽選が当たったんだよ。」

「そんな博物館みたいなのがあんのか。」


 水瀬と話すと疲れると、改めて感じさせられる時間だった。

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