三話 試験結果
5月、ゴールデンウィークの終わりに、陰陽署入隊試験は福岡陰陽署にて開かれた。保護者の署名が必要だったので、すずめ姉さんに相談することにしたのだが、すんなりと受け入れてくれた。いずれ、こうなることがお見通しだったようだ。
(合格しちゃったよ……)
俺は今、ロビーの天井に吊るされたモニターの真下で、自分の受験番号と映し出された番号を見比べていた。
(妖力の適性検査がほとんどだったな。)
試験結果発表が12時、説明会が12時30分の為、自分の番号があることを確認し、俺は足早にその場を後にした。
(受かったのは5人か。)
200人は収容できるであろう会議室に、まだらに座る4人。人手不足というのは本当らしい。年齢も10代から30代までと色んなタイプの人が受かったようだ。
俺は、窓際の他の座っている人達より2席程後ろの席に座り窓の外を眺めて時間を潰すことにした。
それから5分後、スーツ姿の齢30代程の男が教壇の前に立ち、マイクを取り出した。
「こんにちは。皆さん合格おめでとうございます。」
と、見かけによらず、柔らかい口調で話し始める。
「まずは、陰陽署とは、陰陽師とは何かについて改めて説明させて頂きます。では――」
それから1時間程、概ね先日水瀬から聞いた話と同じ内容を話し始めた。途中寝てしまいそうになったが、流石に5人しか居ない中で寝るのはまずいと思い、閉じていく瞼を擦りながら長く感じる時間を過ごした。
結果として、説明会で新たに知ったことは、陰陽師には階級があり、(一ツ星→二ツ星→三ツ星)になっている。さらに、三ツ星よりも上には、「祓」という現在、8名で構成された組織が存在する。
陰陽署に所属することで署内のトレーニング施設を使える他、装束や装備の手入れに配給、過去の妖怪のデータ保管室の閲覧といった多くの施設の利用が可能となっている。
そうして帰りの電車に乗りながら、今日の出来事を振り返る。
(北海道奪還で全線に出るには、少なくとも三ツ星にはならないとな。俺、妖怪だから簡単にいけそうだけど。)
最寄り駅まではもう少し掛かりそうだったので、疲れてたこともあり、少しだけ眠ることにした。
家路に着いた頃にはとっくに日は暮れていた。玄関を抜け、リビングに入る。
「ただいまー。」
「お帰りぃ。」
「お帰りー。」
2人が暖かく出迎えてくれる。俺は、そんな、小さな平和を続けていたい。
俺が生まれたばかりの頃、宛もなく彷徨っていた所を2人が拾ってくれた。妖怪の国を作ろうとする気持ちも理解できるが、だからといって周囲を傷つけて良い理由にはならない。
人間と妖怪のどちらもが平和に暮らせるにはどうすれば良いのだろう。