二話 妖怪と人
翌日の土曜日、俺は天神である人物と待ち合わせをしていた。少し離れた所から青年が小走りでこちらへと向かって
「まだ十分も前なのに……真面目だな。」
「それはお互い様だろ。」
「まあ、取り敢えずカラオケ予約しておいたから話はそこでしようや。」
「確かに、俺達の話を聞かれるのはまずいよな。」
◇
カラオケに着き、示された番号の部屋に入り、向かい合うようにソファに座ったところで、陰陽師の青年が口火を切った。
「とりあえず自己紹介からだな。俺は水瀬凪斗、よろしく。」
「俺は、山ン本五郎左衛門、よろしく。」
そう言って水瀬が突き出した右手に、俺も手を出し握手する。
「じゃあ山ン本って呼ばせてもらうわ。早速なんだけど、山ン本についていくつか質問させてくれ。まず、山ン本の能力ってなんだ?」
「俺の能力は、刀を顕現し、相手の能力を習得することができる。んで、相手がその場から離れても効果は継続する。」
「強いな、次の質問、妖怪は大体どれくらいの数潜んでいるんだ?」
「駅からカラオケに着くまでで、ざっと十人は居たな。皆危険な奴じゃ無さそうだから安心してくれ。」
「あぁ、俺も疑ってる訳じゃないさ。最後の質問、妖怪しか知らない情報ってあったりするか?特に妖怪事変で。」
「あれはきっと、神野悪五郎が筆頭になっているんだと思う。あいつは妖怪達の中で要注意人物だからな。」
水瀬は数秒の間、思考を巡らし
「聞いたことある。確か100年近く前の妖怪合戦の悪い方の幹部的なやつだった。」
「俺も見たことはないんだけど、とんでもなく強いらしい。」
「なるほどな、ありがとな。俺からの質問は終わりだ。」
俺は、ドリンクバーから注いだコーラで喉を潤し
「じゃあ、俺からも質問を、陰陽署について教えてくれ。」
「陰陽署は、16歳から入隊することができる、対妖怪組織だな。で、陰陽師についての説明なんだけど、そもそも人間は妖怪に比べて圧倒的に妖力が少ない、そこで妖力を陰陽五行って言う木火土金水に細分化して妖力の消費を極力減らしてんのよ。それでも、妖怪と互角に戦える程の力がなかったり、陰陽五行の適性が一人一種類しか無かったりしたもんで、札に妖力込めて印を書く妖札で、妖札に込められた印の発動に妖力を使うだけで良くなって、他者に書いてもらった他の陰陽五行の印も使えるのよ。更にトップの力を持つ人達は憑依札ってのを持ってる。こんなところかな。」
「なるほど、理解した。ありがとう。」
「で、本題なんだけど、陰陽署に入隊するって本気?陰陽署は妖怪に家族や友人を奪われた人達がほとんどで、妖怪の在籍なんて言語同断だぞ。」
「俺は人型と妖怪だから変化を必要としない、故に見た目でバレることはまずないだろう。だから、能力を隠して入隊試験を受ける。調べたら次の試験は来月らしいな。」
「そりゃあ、陰陽署は常に人手不足なんだよ。」
「お前ならきっと合格するだろうな。入隊したらその
時はよろしくな。」
その後、交流会ということで、19時までのフリータイムを歌って楽しんだ。凪斗は知らないアニソンばっか歌ってた。指摘した時の
「カラオケで皆が知らない曲歌う人無理って言う奴訳分からんわ!カラオケはな!知らなかった良曲の発見場所でもあるんだよ!」
が、忘れられない。あいつ意外とおしゃべりなんだな。