救世のメスと破滅のオス
「……あいつが、オマエの母親……? オマエより若くねえ?」
友青がビックリしたのは、電蔵の母親である王様の姿。
「お前さんの知ってる母親とは違うかもしれんな」
「何語だ? 日本語か。お主の後ろにいるちっこいのが、ショタか?」
「多分」
電蔵が曖昧な返事をする。王様は友青を見てしかめっ面になった。
「……わしの思っていたのと違う……可愛くない」
「そうだな。オレもそう思う。まるで可愛げがない」
二人は目線を合わせてうんうんと頷いている。意気投合。電蔵と王様にしては珍しく、意見が合致している。それぐらい友青には可愛げがない。
「なんだよ。何二人して頷き合ってんだよ。気色悪いぞ、オマエら」
「おまけにオレたちの悪口まで言っている。気色悪いとさ」
「気色悪い? こんな美貌を持った百余歳のメスを前にして、気色悪い? なんじゃ、その童は。可愛げがないばかりか、打ち首の刑にされたいらしい!」
「それだけで打ち首というのも、どうかと思うが……。人間の真似事か?」
電蔵は冷や汗をかく。友青の首が飛ぶのを想像したのだろう。
「冗談じゃ。わしも電蔵みたいに冗談を言うようになったぞ?」
「救世のメスの冗談は、笑えない冗談だが」
「確かに…………きゅうせいのメスってなんだ?」
「話せば長くなる」
「俺やっぱ、いらないんじゃねえか」
電蔵たちだけで会話が進んでいる。友青には完全にアウェーだった。
「まあそう言うな。お前さんを連れてくる仕事は終わったんだ」
「なら俺もう帰っていい? つまんねえんだけど」
友青がぶすくれた顔でペッと唾を吐き捨てる。それを見ていた王様がわなわなと震え出した。信じられないといった表情で、怒髪天をついた。
「もっと可愛いショタを連れてこい電蔵!」
「もう日本には戻らないぞ。オレは覚悟を決めたんだ」
電蔵の真剣な眼差しに、王様は言葉を失う。
覚悟を決めて、命を全うすることを選んだ電蔵。それをまだ受け入れられない王様。
電蔵と王様の二つの思いは、やがて世界を救うことになるのだろうか……。
「諦めて電蔵を始末しろ、救世のメス」
「…………そんなの、わしにはできん!」




