破滅のオス
「ちょっとブラックスフィアに帰ろうと思ってな。お前さんも来い」
「嫌に決まってんだろ。二度と日本に帰れなくなるのは嫌なんだ。俺は日本を出るつもりねえから。オマエ一人で行けよ」
「……そういうわけにもいかん……まあいい。お前さんを連行する」
「はあ? 連行とか、ふざけてんのか?」
「文句は後でたっぷり聞いてやる。だから今はとりあえず……王様に会うぞ」
電蔵は友青の胸倉を掴んで、引きずる。友青が暴れても電蔵は聞く耳を持たなかった。
「人さらい!」
「あーあー。聞こえないなー。オレはやることやってるだけだからなァ。文句なら王様に言ってくれー。さあ出るぞ、日本を! 王様の息子の帰還だ!」
電蔵はキラキラした目でヨーロッパの方を見据えた。ずっと帰りたかったあの場所に、やっと帰れるのだ。目的を果たして達成感でいっぱいになっている。いい表情をしている。
友青をいじめているからかもしれないが。
「……どっかの映画でも観たのか?」
カードで通信を開始。庄時と王様によって、ブラックスフィアにワープする予定だったのだが、庄時の消息が不明らしい。電蔵は原因が何かを王様に訊いた。
『……もしかしたら、庄時は時空の狭間にいるのやもしれん』
「……だったらどうすればいい? オレはブラックスフィアに帰れないってことか?」
『お主は帰れる。わしの力があれば、お主を呼び戻すことは可能じゃ。だが、庄時が……もし、あやつが死んでおれば……わしはどう責任を取ればいいか……』
通信をする王様が弱さを見せた。電蔵にはいつも気丈に振る舞っていた、あの王様が。
「……何か、したのか」
『……ブラックスフィアの秘密を知ろうと思って、過去に行った。電蔵。お主のことも、わかったぞ……お主が生まれた理由……』
「……なんなんだ?」
電蔵が耳を澄まして聞き返すと、王様が吐くように呟いた。
『お主は……っ』
『ブラックスフィアを滅ぼすために生まれてきた……破滅のオス……!』
「破滅……?」




