泣き喚く王様
鼻を高々と伸ばし、王様は得意気に平らな胸を張った。
「……相違ない」
それには電蔵も苦笑する。だが、言葉は本心から出たものであった。
王様は本題に戻す。幼い男子をどこの国から連れてこようかという話だ。
「……イギリスもちょっと飽きてきたな」
不機嫌そうな顔をする王様に、電蔵は顔を顰めた。
「おいおい。そりゃイギリスに失礼じゃないか? 言語もイギリスのものをちょっと拝借してるじゃないか。王様は気楽だなァ。そんなんでいいのか?」
「イギリスには世話になったが、他の国のことも知りたい。それはお主もそうであろう?」
「確かに。ま、王様がそう言うならそれでも構わんが……」
「どこの国がいい? 電蔵、お主が決めろ」
「またか! オレに全権を委ねる気か! オレだって暇になりたいんだよ」
電蔵はむかっ腹が立って、王様に怒鳴った。王様は電蔵に怒られても平然としている。悪気があって言っていることであり、電蔵を怒らせるのが好きなのだ。天邪鬼な王様は。
「わしは世界のことはわからん」
「お前さんが一番知ってるんだよ……!」
「むむう。電蔵め……ああ言えばこう言う……」
「王様に言われたかないな」
王様が睨み、電蔵は見下すように見る。どちらも横柄な態度を崩さない。王様に生み出されただけあって、電蔵も王様と似たようなものだ。それに気づいていないだけで、似た者同士なのだ。
王様は思いついたように指を鳴らした。
「なら、いい国を作ろう!」
「そりゃ無理だ。王様が国を作る時点でいい国にはならん。不可能だ」
「何事も不可能と言ってはいけないぞ、電蔵」
「そうだな。だがオレにはいい国じゃない。オレには優しくない、他の息子には優しい。そんな国はいい国じゃないな」
「お主に優しい国はここじゃ」
「どこが。王様はやっぱり頭どうかしてるな」
電蔵はハァと溜息をついた。王様は目を吊り上げる。
「何ィ!? お主、母であり王様である、このわしを……このわしを……!」
そして泣き出した。こどものように泣き喚き、鼻水も垂らしている。そんな姿を息子である電蔵に見せているのだ。母と王様の威厳などあったものではない。
「随分泣き虫な母だなァ」