小学生男子の遊び
そう、久三の家に招いたのだ。
「よし、これで任務達成だ! やったぞ、久爺さん!」
電蔵が天を仰いでガッツポーズを取った。対する友青は舌打ちの連続。舌打ちのプロのように、丁寧に一回一回舌を打ち鳴らしている。音楽家も夢じゃない。当然、舌打ちの。
電蔵と友青、彼らのテンションは雲泥の差だ。
「そんなに喜ばれるとムカつく」
「お前さんも喜べ! 離れ離れになったジジイとクソガキが対面するなんて、滅多に見られないことだ! ほら、泣け。泣かないと青春っぽくないだろう! 泣けよ、少年!」
電蔵が急に熱くなったのについていけないのか、友青はごろんと寝転がる。
「人に泣けって言われて泣けんのは、役者だけだってーの」
「青春というのは、泣くものだと聞いたが? お前さん、青春したくないのか?」
足の爪先で友青の肛門を刺激した。友青がとんでもない声を上げる。猫も毛を逆立たたせるほどの絶叫。大音量で、悪戯をした電蔵も耳を塞いだ。
「おおおおオマエ、何すんだよ!」
「何って、ケツをこっちに向けるからだろうが。浣腸してくれと言わんばかりに」
「クソガキはオマエだろ! 他人のケツに足の指なんか突っ込むなよ、汚えな!」
「大丈夫だ。オレに水虫はない」
「そういう問題じゃねえ!」
必死に訴える友青の話を、電蔵は適当に受け流している。興味なさげに耳の穴までほじくって、耳くそを息でふっと吹き飛ばしている。
「他人の家に呼ばれたからって、自由に寛いでいいわけじゃないんだぞ?」
「……ぐ」
「さて、ここで少年に問題だ。たとえ友達でも触れてはならないものがある。それをなんと言う?」
「地雷」
それは踏んではならないものだ。
「秘め事だ」
「わざわざ難しく言うなよ!」
「そこらへんに転がっているものを、勝手に触ったりしてはいけないんだぞ。勝手に寝てもいけない。ケツを向けるなんて最低だ。せめて一言ぐらい断りを入れなくちゃな。ケツを向けてもいいかと訊け。訊かなければ、そのケツはオレが駆逐する」
「うるせえなあ。わかったよ。小言は嫌いだぜ」
「言われる方が悪いんだ」
「……ああ言えばこう言う……」




