暴走する力
電蔵は目を逸らして逃げるように背を向けた。出口まで歩いていき、友青を待つ。
待ちながら、なんだか気分が悪くなったので片目を瞑って耐える。
「どうしたんだ、オレは……」
電蔵は自身の胸を押さえた。苦悶の色を浮かべ、中腰になる。額に汗が噴き出て、呻いた。途切れ途切れになる息。周囲の者が電蔵を心配するように見た。
「ハッ、ハッ……」
握り潰すかのごとく、胸を乱暴に掴む。かきむしるように、強く。
瞳から光が失せる。瞳が激しく揺らぐ。心臓の音が激しく脈打っているのだろう。
「……ぐ……」
電蔵の感情の変化によって、幾度となく暴走してきた電蔵の力。それが更に強大になり、電蔵の身体を蝕んでいく。心も身体も支配する。
まるで、力が心を持っているように――、
「……紫水?」
友青が紙パックのジュースを飲みながら電蔵に声をかけた。すると、電蔵は目を見開いて息を深く吸い込み、整えた。友青が来たことにより、激しい動悸は止まった。
「……ああ……待っていたぞ」
「わりいな、待たせて」
「悪いな、本当に」
「それよりオマエ。さっきどうしたんだよ。持病の悪化か?」
「そんなもんだ」
「若いのに大変なんだな」
「お前さんが気にすることじゃない。若いのに苦労しているのは、お前さんの方だぞ、少年。友達が一人もいないなんて、人生寂しいじゃないか」
「う、うるせえよ……オマエがいるじゃねえか」
「オレを数に入れるのか? まあいいが……それでいいのか、お前さん」
電蔵が自分を指差してキョトンとした顔をする。今まで仮の友達だったのに、随分と進歩したものだ。それだけ友青が電蔵に懐いているのだろう。
電蔵はにまにまと厭味ったらしい笑みで答える。
「できれば、小学生の友達が欲しいよなァ」
「……くそっ」
友青が電蔵を友達として認めたので、久三との約束を果たせることになった。




