危うい世界
また王室に戻り、王様に訊ねる。
「ならば次だ。どの国の者がいい?」
「イギリスでいいじゃろ」
「それじゃ言葉がわからん。単語しか聞き取れん。王様もそうだろ?」
「む。確かに……ではどうする? お主、何かいい案は浮かばんか?」
「どうだろうな。オレは名案を製造する機械ではないからな……難しいところだ」
電蔵は皮肉たっぷりに笑った。
「電蔵……」
「なんだ? 何か思いついたか、王様」
「いや……そうではない……お主、何故そんなに皮肉ばかり……」
「日頃の心労の所為だ。つまりは王様。お前さんが全面的に悪いっ」
「そうか、疲れがたまっているのか……」
「王様が我儘でなきゃ、オレも疲れないんだが」
「それは大変な相談じゃなあ……わしに言われてもどうにもできん」
「お前さんのことなのに、か?」
「わしのことでも、だ。性格直せと言われてすぐ直せるか? お主の皮肉、直せるか?」
「言わないようには努力できるが。その代わり、腹黒くなるぞ?」
「元々お主、顔に似合わず腹黒いではないか! 何を今更」
「お前さんがこうさせたんだろうが。責任取ってもいいと思うが」
「責任ってどうやって取るんじゃ。のう、電蔵よ」
「さあ……。オレに休養を与える、とかか?」
「それなら簡単だな。お主の休養は消滅する時じゃ!」
縁起でもないことを口走る王様に、電蔵は冷や汗を垂れ流す。
「嬉しくないぞ、王様」
「お主を喜ばせると、この世界が沈んでしまいそうだからのう」
王様は愉快そうに笑みを湛える。王様の表情とは裏腹に、電蔵の表情は曇る。
「いや……。オレを喜ばせても沈まんよ……王様がゲームしなくなった時に沈むんだ、この世界は」
「黒い海に、じゃな……」
「そうだな。この世界は危うい」
「わしらがニューゲームを考えなければ、とうに沈んでいたやもしれん」
「……ああ。王様の考えは的確だった。現にこうして、この国に入り込んでしまう者が後を絶たない。毎日ゲームさせられる始末だ。お前さんが動ければよかったんだがな」
「やはりわしは偉大だな!」