嫌われ者の友青
電蔵が日本に来てから早一週間が経った。友青には電蔵を除いて友達が一人もできない。
友青がどれだけ譲歩’(じょうほ)しても、相手が近づくのを拒んでいる。そこまで嫌われる理由はなんなのかと電蔵が問い質しても、友青は答えなかった。
「俺のことが嫌いなんだろ。あれだよ、生理的に無理っていうやつ」
「……自分で言ってて、悲しくならないのか?」
「すげえ悲しくなる」
「だろう。やはり、見た目から変わるべきか?」
電蔵が上から下まで友青の姿を見た。厳しい表情だ。電蔵のように小奇麗な格好ではなく、だらしなく小汚い格好をしているので、目の色も変わるだろう。
友青は目を細めた。見定められて不快な思いをしている。
「髪、整えてみろ」
「癖毛なんだよ」
「見た目は大事だぞ。これはどこに行ってもそうだと思うんだが」
「……家が貧乏」
「それは嘘だな。家が貧乏なら、貧乏なりに工夫できるだろう」
「そんなことができるやつらは、限られた貧乏なんだよ」
電蔵の目が輝いている。ちょっとカッコイイと思っている目だ。
「そんなの、初めて聞いたぞ。お前さんが作ったのか?」
「貧乏でも工夫すんのが苦手な貧乏だっているんだよ。あんまり訊くなよ、ボンボン」
「だから、ボンボンというのは、なんなんだ。髪をくくるものか?」
「金持ちだろ。俺は一回しか言ってねえけど」
「ああ。久爺さんがな……」
「キュウ爺さん?」
「ああ。久三と言う名の爺さんだ。お前さん、知ってるよな」
「……」
「会ってもらってもいいか?」
「嫌だね」
「連れていくと約束したばかりなんだが。なァ、頼むから来てくれ」
「なんでオマエの頼みなんか」
電蔵が友青を指差した。




