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王様のお遊戯(あそび)  作者: 社容尊悟
第三章 王様とブラックスフィア

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過去の自分を見て、恥ずかしがるムューユ

『電蔵が見た夢、一体どんな夢だろうか』

 王様は気になっている様子で、考え込んでいる。過去の自分の姿を客観視するというのが恥ずかしいのか、ムューユは頬を染めて地面を眺めた。もじもじと指を絡ませて過去の自分を垣間かいま見る羞恥心しゅうちしんに耐えている。自分がどんな表情をしていて、どんな仕草をしているのか、気にしたこともなかったのだろう。

「わし、意外に猫背……」

 と、こんな風にがっかりすることもある。

 後ろ姿を凝視していると、ムューユはふと気がついた。

「……なんじゃ、あれは」

 王様の髪から伸びる白いしっぽのようなもの。自立しているように左右に動いている。

「まさか、白髪しらがか?」

 ムューユは自分の姿を確認してみるが、そんなものはどこにもなかった。

『最近、眠くてたまらん……どうしたもんか』

 王様が頭をかいていると、しっぽが腕に巻きついた。

「なぬ!」

 第三者として見ているムューユは奇声を発した。干渉できないのはわかりきったことだが、ムューユの声で王様は動じていない。いや、生えているしっぽに感覚がないのか。

 痛覚や触覚といった感覚が麻痺している。

『何か、頭がかゆいな……石でも投げられたか?』

 しっぽがにゅるりと動き出し、ぽとりと地面に落ちた。しっぽは暫く固まっていて、王様がいなくなると顔を出した。アンニュイでチャーミングな顔をした生物だった。オコジョのような生物で、毛がふさふさしていて柔らかそうだ。

「か、可愛いぞ!」

 母性本能が目覚め、ムューユはその生物に飛びつく。しかし、空振り。すり抜けたのだ。ムューユはこの世界に干渉できないことを、今知ったのだ。鼻を地面にぶつけて。

「……痛くない……」

 そこからわかったこと。この世界の正体は、記憶の世界。この世界を構成するものが物質ではないということが明らかになった。庄時の力は完璧なものではなかった。つまりは、夢と似たようなものだ。

 そしたら、消えたムューユの身体は今どこにある?

 庄時の術が失敗した。そう結論付けていいだろう。ムューユは全く意に介していないが、これは非常事態だ。ワープをした庄時も元の世界に戻れなくなる可能性が高い。

 ムューユが顔を振り上げた。髪がふわっと広がる。

「……そういえば、どうやって帰るのか、訊いておらんかったな」

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