ムューユの復活
『……そうだ。私が生み出せば……』
オスを生み出す力を持っているムューユが自分を見て、言った。
『これもゲームだ。雷貴に会えるかもしれない……』
それから毎日、ムューユはオスを生み出した。次から次へと生まれるが、雷貴には出会えない。
どの息子にも愛情を注ぐことができないでいた。どれだけ生み出しても、世界の均衡を保つだけで、なんの変化も訪れなかった。
『幾ら待ってもお前は生まれてくれない……どうしたら会えるんだ』
生み出せるといっても、目当ての者を生み出せるわけではないのだ。
それならば、雷貴に似た者ばかりが生まれていてもおかしくない。あれだけ雷貴が好きなら、ムューユは雷貴を量産していることだろう。想像するだけで気持ち悪いが。
『……はあ……』
それから何年、何十年、といった月日が流れたのだろう。その間に、ムューユの記憶は歪んでいって、雷貴のことを忘れてしまったのかもしれない。いや、忘れてはいないかもしれない。雷貴の生まれ変わりと思しき電蔵のことを愛してやまないのだから。
だが、魔天種も人間と同様に、記憶は風化していく。どれだけ愛していても、形の残っていない者を思い出すことができなくなっていく。写真がないこの世界では、記憶だけが全て。今あるものが全てなのだ。
何十年も想い続けていれば、もうそれで十分だよと言ってあげたくもなるものだ。
「……それで……百年後に電蔵が生まれた……。そいつが、最後の息子だったということか……。愛しいやつだしな、贔屓するのも……仕方ないか」
庄時は一部始終を見たわけではないが、なんとなくこれからのことを予想できたのだ。
ムューユが雷貴を待ち続けている間、どれだけ頑張っていたか。電蔵が生まれるまで、ずっと我慢してきたのだろう。我儘を言うのを、ずっと。だから今、電蔵いわく我儘でぐうたらでどうしようもない王様になっているのだ。
これ以上過去を見ていても進展がなさそうなので、庄時は現在に戻ることにした。
ムューユが着いた先は数年前のブラックスフィアだった。
「……む? 電蔵……」
王城を囲む庭に、王様と電蔵がいた。ムューユ・パルヒャネラと紫水電蔵の数年前の姿だ。今とほとんど変わっていない。王様は花を見ていて、電蔵は片足を曲げて座り、空を見ていた。
『なァ、王様。オレ、時々夢を見るんだ』




