消滅する雷貴、落ち込むムューユ
『ゲームの王様だと? そんなもの、なってどうする』
『面白いものは好きだ。私の考えたものを試したい。どうなるか、楽しみだ』
『雷貴様。その者の言葉に耳を傾けてはならない』
部下が間に割り込んで、雷貴を説得する。
雷貴が部下を制して、一歩前に出てムューユを見下ろした。
『記憶は消さない。我は長く生きる。お前よりも長く』
『王様のお遊戯だな』
ムューユは腰に手を当てて、胸を張って堂々としている。
『我がお前なんかに負けるはずないだろう』
『そうやって自信満々な王は、いつも負けを見る。吠え面かいても知らないよ』
『必ず負かす』
『意外とこどもっぽくて、楽しいぞ』
雷貴とムューユのゲームが始まった。ムューユは雷貴に惹かれていき、雷貴はムューユのことが気になっていた。傍目で見ていれば、なんともやもやした気持ちになるのかと庄時は胸を押さえていた。電蔵と王様が恋愛ごっこをしているように見えるのだ。
雷貴は王として最後の決まりを作った。ゲームに始まり、ゲームに終わる世界になるように、システムを改竄したのだ。ゲームをしなくなれば、この世界は消滅する。雷貴の黒い雷によって、世界は終焉を迎えるのだ。それをムューユが知るのは、百年後のこと。
こうして、雷貴とムューユのゲームの世界が誕生した。
しかし、雷貴は数年後、役目が果たされ、死亡した。その時、雷貴は失意のあまり、呪いをかけたのだ。役目を果たして苦しんで死するのが嫌だった雷貴が、役目を果たした者を消滅させる呪いをかけた。結果、そうなってしまったのだ。
『我はいずれ蘇る……一度は世界を掌握したのだから……いずれまた……』
それはムューユに大打撃を与え、今も尚苦しめている。
この世界は一度崩壊した。取り残されたのが、ムューユだけになってしまったのだ。
『雷貴……酷い……何故そんなことを……』
ムューユは玉座から一歩も離れなかった。泣いてばかりいて、情けない姿をしていた。
それを無言で見つめる庄時。
『私はお前が大好きなのに……』
毎夜泣き明かすムューユ。ゲームをしなくなり、ブラックスフィアは消滅の危機。
庄時は不甲斐ないムューユに喝を入れたい気分になっていた。
「何してるんだよ、王様……!」
『雷貴……会いたい。会いたいよ……』
手を差し出すが、空を掴んでいるだけだった。




