雷貴(らいき)の大勝
『電神と名付けたのは間違いだったか……』
紫電を黒雷で弾き飛ばした。パリパリッと音が発され、すぐに消えた。
『雷貴……お願い……』
『断る。我らオスから生まれたメスが、何故オスに逆らう。理に反するのか』
『……いずれ……メスからオスが生まれる……希少なメスが……この世界を支配するようになる……これは、古くからの言い伝え……』
ポワポワとした白い光に包まれて、電神が消えた。電神が消えても、雷貴は腑に落ちない様子だった。電神の言葉が気に食わないのだろう。
『……我を止められないのに……?』
雷貴は惨憺たる光景を目の当たりにして、狂気を孕んだ笑みを浮かべた。
首と形の残らない黒い灰のみ。建物は全て灰に帰した。雷貴と雷貴を慕う者たちがメスを滅ぼしたのだ。勝利の雄叫びを上げる雷貴の部下。これで、雷貴がこの世界の真の主となったのだ。反対する者はもういない、と。
『雷貴様万歳!』
『勝利だ! 我らは勝ったのだ!』
『祝杯だ!!』
ずっと黙って見ていた庄時は、口元を押さえた。泣きそうになっているのではない。えづいた。
「……気持ち悪りい」
この有様を見て、何も思わない者がいたとすれば……それは恐ろしいことだ。ここにいる者たちは何も思わないのではなく、喜んでいる。同郷の者を殺して、喜んでいる。
ここで何か言っても無駄なのだろう。誰も聞き入れはしない。
争うことが残酷なのだと庄時は知った。あの憎しみが、電蔵を殺害することになっていたならば、どうなっていたか。そうならなかったのは奇跡だった。
もし、憎しみが殺意に変わっていたら、雷貴たちと同じになってしまう。
「俺は……とんでもないことを……俺は最低だ……」
電蔵を妬み嫉んでいた自分を激しく責めている。
しかし、雷貴と電蔵の関係はまだ明らかになっていない。電蔵が雷貴の生まれ変わりだとしたら、殺した方がいいのではないか。せっかく理解できたのに、苦しい結末だ。
『さて、王城に戻るか』
マントをバサッと翻し、雷貴が先頭切って歩き出した。わらわらと集まっていく部下。
無傷での勝利。即ち、大虐殺。一方的に殺しを行った。残酷で非情な仕打ちだ。
庄時は私情を挟まないように、十分に注意した。全ては真実を知るために。




