凄惨な戦争
これまで見てきたが、謎が増えるばかりで、何も解決していない。庄時はいつまでここにいればいいのだろうと不安になってきたようだ。
この時代の者が城内を一斉に飛び出していく。リーダーらしきオスが皆に呼びかける。
『剋黒雷貴様がゲームをしようと仰せになった! メスどもを皆殺しにする!』
「コッコク?」
無論、そう言ったのは庄時だった。
『雷貴様が……』
『我らの出番だ!』
『おおおおおお!』
オスばかりで、暑苦しいと庄時は思った。正に群雄割拠の時代と称すべきか。
皆が獲物を持って、黒い霧に隠された町を目指した。そこにメスが住んでいるらしい。
黒い羽を生やして、オスが町を襲撃する。煙が上がり、首が舞い、悲鳴が上がる。
何もできない庄時は、事の顛末を見届けることにした。
『この世界からメスを滅ぼす』
雷貴がそう宣言すると、空がゴロゴロと曇っていく。雷神の如き、気迫。天空を自由に支配し、雨風を呼ぶ。凍てつくような雨と風。それらは雷貴だけを避けていく。両手を広げ、天を仰ぐ。最後には、黒雷。黒い雷を喚んだ。電蔵が使う力よりも強大な、黒い雷。
逃げ惑うメスが断末魔の叫びを上げる。黒い雷に打たれ、消滅していく。味方すらも焼き尽くし、雷貴の力は猛威を奮った。
傷だらけになって逃げ延びている少女のようなメスが一人だけいた。
『雷貴……!』
ムューユ・パルヒャネラには似ていないが、電蔵の魔天種によく似ている。
『電神か……しつこい奴だ』
「あいつ……もしかして、本当に電神って名前なのか……?」
『あなたを止める』
『……我を止める気か?』
『わたしになら……止められる』
ぐっと電神が手を差し出した。紫電が弾け、綺麗な輝きを放つ。紫電が雷貴を浄化するように包み込んでいく。
『お前を生み出したのは我なのに……それでも止めると言うのか?』
『大丈夫。わたしは消える……この力を使えば消えるもの……』
『……ふん』
抵抗する気配がない。手を差し出して震えている電神の顔色が、青白くなっていく。
『お願い……』




