たまには労いの言葉を
「むむ……それはわからんぞ。わしらは五十歳が成人だからのう。四十歳までがショタかもしれん。なら、電蔵もショタか!」
「オレも? それは流石にないない」
電蔵は目を線のように細めて、手を振った。
「では、三十歳以下か……」
「ああ。やめて王様。そんなに言うとオレの歳がばれてしまう」
「誰にばれるんだ」
「オレと王様の会話を聞いている息子たちに」
「そんな聞き耳立てている息子を生み出した覚えはないぞ?」
王様は眉根を下げて首を傾げた。電蔵は口元を歪ませた。
「いや王様。あのだなあ、割とみんなに筒抜けなんだ」
「……そうか。みんな、わしたちと話をしたいんだな。そうだったか」
「ああ。たまには頼ってくれと庄時が言っていたぞ」
「庄時が……そうか。伝言ご苦労だったな、電蔵」
「苦労なんかしてないがなァ」
「……電蔵。わしの労いの言葉を、そういう返しで無下にするの、やめろォ!」
王様の怒号が飛んだ。目に見える王様の怒りの風を、電蔵は避けた。電蔵の真後ろにあったドアが圧潰。電蔵はドアから離れて見て見ぬふりをする。
「王様ァ。そうやってすぐに手を出すの、やめてくれよ」
「避けられるくせに何言っとるんだ、お主は! 見ろ、ドアが壊れた」
王様は怒り目になって、玉座の肘掛に乗り出した。我儘な王様は自身の行いを省みない。
「そりゃお前さんの所為だ。オレは悪かない」
「ぬぬぬ……電蔵、お主、わしが嫌いか?」
しょんぼりとした顔で犬のように喉で鳴いた。電蔵は瞼を閉じて、答える。
「好きじゃないが、嫌いじゃあないな」
「お主は正直なやつじゃなあ……いっそ清々(すがすが)しいわい」
そんなお主が好きだと言わんばかりの顔で、王様は困ったように息をついた。
褒められているわけでもないのに、電蔵は嬉しそうに破顔一笑に付す。
「ははっ。光栄だな。お前さんの息子でよかったと思える」
「これからも宜しく頼むぞ」
「それは断ろうか」
こうして、王様の所望する幼い男子を探すことになった。
人間の成人はおおよそ十代晩年~二十と聞く。王様の息子たちによる情報だ。