玉座から動ける、この時代の王様
電蔵によく似た顔の王様が、顔を歪めて苛立っている。
『卑しい自分たちのことを魔天種などとほざく。挙句に我らオスを魔種だと? 力も身分もないくせに、口だけは一人前なやつらだな』
『仰せの通り』
『なら、どうする。お前たちはどうしたい?』
『根絶やしにしたい』
王城の者が、火のついた目で電蔵似の王様に宣言した。
『よし。許可しよう。メスどもを皆殺しにしろ』
電蔵似の王様が、バッと手をかざした。不敵な笑みを浮かべている。
庄時は戸惑いを覚えつつも、彼らに口出しできない。衝撃の事実に目を背けられない。
「内紛……? そんな時代があったとは……」
『はっ! 仰せのままに!』
きちんとした敬語ではないものの、敬意の感じられる言葉遣い。この時代は王様を崇高な者としていたのだろうか。
『ゲームをしようか……そうだな、ゲームなら殺し合いも柔らかく聞こえる……』
邪悪な笑みを浮かべ、電蔵似の王様は呟く。
『ゲーム……か』
「お前、一体なんていう名前なんだよ……」
電蔵似の王様が、立ち上がる。ファーのついた赤いコートをバッと翻し、ツカツカと歩いていく。憎々しげに睨みつける庄時を無視して。
『さて、戦争だ……』
ドアに向かって歩いてくる。庄時は思わず、後退した。
「な、なんで動ける……」
庄時がうろたえていても、電蔵似の王様はすり抜けていった。ドアを開き、出ていく。
「王様は玉座から一歩も動けないはずじゃ……」
まさか、今の王様であるムューユ・パルヒャネラは玉座から動けるのだろうか。だとしたら、何故玉座から一歩も動かない。周りの者を使うようになったのか。
庄時は固唾を呑んで、電蔵似の王様の後をつけた。
城内の者の話を聞いていれば、電蔵似の王様の名が判明した。ライキというらしい。
電蔵に似ていることからライは雷と推測した。キが何かは庄時にはわからなかった。性格から考えれば、雷鬼だろうと思っていた。
「ブラックスフィアのこと、何かわかるのか……?」




