電神(でんしん)登場
ブラックスフィアを守る王がいなくなれば、この世界は崩壊するのだろうか。
「でもそれをわかってたら……行けないよな……」
庄時が考えを口に出していると、王室の物置からメスが顔を出した。二本の角がある。
透き通るような白磁の肌。王様よりも幼い顔立ち。白水色のウェーブした髪に、紫水色の瞳。見目麗しい容姿だった。着ている服は、真っ白な半袖のワンピース。裸足でとことこと歩いている。
「王様に代わって、わたしが守る」
「……お前は……」
「わたしは電蔵の魔天種。密かに育てられていたの」
「名前は?」
「名前はまだない」
「なんて呼べばいい?」
「わたしが今日から王様」
「それは混乱する」
「じゃあ電気の神。電神と呼んで」
「そんな名前でいいのか?」
「電気の蔵の上位互換だから」
しれっと無表情で電神が答えた。それならば、電気の宝庫で電庫など、どうだろう。いきなりランクが上がって、庄時もたじたじとしている。
「……で、電神……」
「なに」
「俺は庄時。宜しく」
「いや」
電神は即答した。庄時の心にグサリと言葉が突き刺さった。
「……は?」
「電蔵を恨んでた。だから、許さない」
「もう恨んでない……」
「恨んでたから、許さない。電蔵はわたしの父親。おまえは敵」
可愛いからこそ、心に酷く突き刺さる。ストレートに敵と言われると、傷つくのだ。
「わたしが守るのはおまえたちじゃない。電蔵と王様が帰ってくる、この世界」
「わかった……。それでいいから」
「わかってない。おまえはここから立ち去るの。王様と一緒に過去を見にいく」
「なんでお前が決めてるんだ」
「今はわたしがこの世界の主。主の言うことには従うの」




