離れていても心はずっと傍にある
「俺たちを導く存在でありながら、そんな仕打ち、していいのか? 俺が電蔵だったら、王様のこと許さないぞ。憎くて殺しにいくかもしれない」
「それはやりすぎだ」
「好きなやつに消えろと言われたようなものだ!」
庄時は腕を振るって、王様に言い放った。いつになく、熱い気持ちを曝け出している。
「庄時、お主……!」
「なんだよ」
「いつの間にか立派になったな……」
王様は感涙している。王様が庄時に叱られているから。
「あの時で懲りたんだよ。電蔵のこと、羨ましがるのはやめようって。みんなと相談もして決めたんだ。あいつのこと、ちゃんと認められるようになろうって、話し合ったんだよ」
「うむうむ……よいことじゃ」
王様は何度も頷いて庄時の言葉を噛み締めるように、聞き入った。
「だから、もう羨ましくなんかないぞ。俺は俺だ。他の息子もそう言ってた。王様に相応しい魔種になるのは、電蔵じゃなくて俺だって、な。ライバルがいっぱいだ」
「それはいいことじゃないか。皆で切磋琢磨し合えるというのは、素晴らしいことだ」
「ああ……王様が教えてくれたんだ」
「そうだったな。わしが話したからだな」
「……?」
「やはりわしは天才じゃったか」
王様は目をキラキラさせて、手を組んだ。
「は?」
「いや、薄々感づいていたんじゃよ? 指導者としても、母親としても完璧なこのわし。そして母性溢れる女神様じゃ。好かれて当然じゃな。うむ、もっと褒め称えるがよい」
むふふと鼻息荒く、王様は自身を褒め称える。
「王様のそんな姿……見たくなかった……」
庄時ががっくりと肩を落としていると、王様がビシッと指を突き出した。
「それだ! そういうところが、お主たちが側近になれないところだ! 電蔵はなあ、お主たちと違って、文句は言うがわしに幻滅したことなど一度もなかったぞ! やつはわしの一番の理解者だったのだ! まずは、憧れから理解へと考えを改めることじゃ!」
王様が大声で叫び出したので、庄時は聞き漏らしてしまっていた。目を丸くして、辺りを見回している。
「な、なんだ?」
「何度も言わせるでない。お主たち、電蔵の足元にも及ばんな」
「……っ、だから、すぐに電蔵と比べるのはやめろって!」




