阿呆と言われるとムカつく友青
苦笑いを浮かべ、頬をぽりぽりとかく。
「なんで俺、オマエと話す時はこんな感じなんだよ。なあ?」
「オレに訊かれてもわからん」
「ついでにさ、なんでオマエ、小学校に来てんの。小学校卒業してねえの?」
「勉強そのものをしたことがないな。家事も初めてしたし、お前さんのTシャツの文字以外、読めん。日本語とは、あんなに難しいものなんだな」
「勉強してないのに、なんで日本語わかるんだよ」
日本語がわかっているのではなく、ブラックスフィアでの言語を日本語に変換しているだけなのだ。日本語に対応する言葉がなければ、電蔵だってわからない。
「言葉がわかっても、文字が書けない……という話は聞いたことあるか?」
「発展途上国のことか?」
教育を受けたくても受けられないこどもたちのことを言っているのだろう。
税金の徴収もままならず、教育にかけられる金もないので、教育を受けさせてあげられないのだ。他国からの援助を待つという、甚だ希望が見出せない願望を持つことしかできない。そうしたこどもたちのために動ける人間が、どれほどいるというのだろう。見返りを求めない人間しか、いないのではないだろうか。
動く人間がいるのだ。心を震わせる人間が。世の中も捨てたものではない。
「……途上国……」
発展途上国に限らず、言葉ではわかっていても文字が書けないことは多々ある。デジタルの時代になってから、文字を書く習慣が減り、物忘れが激しくなったりもするのだ。学校に通うこどもたちの学力も低下している。書くという作業はできれば毎日続けたい。面倒だが、脳の衰えを軟化させていくためには書くこと、考えることが重要になってくる。
「それと少し似ている」
「ふーん」
「だからお前さんの方が勉強できるんじゃないか?」
「オレは勉強できねえよ」
「それは本当か?」
「……なんで食いつく」
「いかにも勉強ができるぜアピールをしているものだから……てっきり」
「そんなアピールしてねえよ」
友青がハァとため息をついた。そんな雰囲気を纏わせている。
「お前さん、阿呆なのか」
「うるせえなあ……アホじゃねえよ。バカだっての。アホって言うな、ムカつく」
「アホとは言ってないぞ。阿呆だ。アホウ」




