電蔵と友青の縁(えにし)
「恥ずかしいやつってなんだよ。べつに一人でもいいじゃねえか」
「お前さんが本当にそう思っているのなら……それは立派なことだが。実際はそうじゃないんだろ。友達欲しいし、青春したいって言ってなかったっけか。それで一匹狼気取りなんて、恥ずかしいに決まっている。周りの人間がオレのレベルに付いてこれないんだとか、オレのレベルが高すぎて理解できないんだとか、思ってるんだろうなァ」
電蔵が意地の悪い笑みを浮かべて、捲くし立てた。
「うるせえな。オマエには関係ねえよな。ほっとけよ」
言い当てられて頭に血が上っている。
「関係ないか。そう言われてしまえばお終いだな。確かにオレには関係ないことだ」
「そうだぜ。だから引っ込んでろ」
「しかしそうもいかない。お前さんを連れていくという使命があるんだ」
電蔵はそのために色々と慣れないことをしているのだ。当初はお試し程度に言ったつもりだったが、こうも縁があるとあっては、絶対に連れ帰ろうと意気込んでいるのだ。
「どこに」
「そりゃもちろん、オレの国だ」
電蔵は胸を張って宣言する。誘拐予告だ。犯罪者だと友青が青ざめた。
「オマエ、変態か?」
「変態呼ばわりするな。オレだって、連れていくなら女子の方がよかった。男なんぞに興味は欠片もない。男ばっかりいて、見飽きているんだ。言っておくが、変態なのは、王様の方だ。オレは断じて変態なんかじゃない」
「さっきっから王様、王様って。なんなんだよ、その王様ってのは」
「ムューユ・パルヒャネラという名の女だ」
「女? それなら女王だろ」
「オレの国の王様は女しかなれない。男はみんな、王様に仕えるもんだ」
「女尊男卑の国なんて、聞いたことねえぞ」
「そりゃそうだ。イギリスの王は女子だが、女王と呼ぶのだろう」
ブラックスフィアは人間に知られてはいけない世界。知っているはずがない。
友青をブラックスフィアに連れ帰れば、もう二度と日本には戻れないかもしれない。王様の許しが出れば、記憶を全て消去して日本に戻すこともできるが。
王様が気に入ったら、手放さないだろう。どうなるかは誰にもわからない。
「……どっか遠い国の人間か?」
「まあ、そんなところだ」
「って、なんで俺、オマエにこんなこと訊いてんの」
「オレに言われてもな」




