友達作りの練習
友青はずるっと腕を滑らせた。
電蔵は友青の前の席になった。
国語も歴史も算数も家庭科も理科も化学も、勉強に関する教科は全てダメな電蔵。
そんなものを習ったことがないので、わからないのだ。しかし教えられれば理解できる。
友青は自身の立場が更に危うくなったことを自覚した。
電蔵が落ちこぼれではないこと。驚異的な吸収力に、友青は舌を巻くばかり。
「どうした少年」
「なんでもねえよ」
「なんでもない顔はしてないぞ」
「うぜえ」
友青は電蔵を睨みつけた。鬱陶しいやつだと思っているのだろう。
「うぜえとはなんだ。お前さん、心配されたくないのか?」
「……なんでも訊いてくんなよ。鬱陶しいから」
「友達、欲しくないのか?」
「……」
「なら、言ってみろ。友達になってやるって」
「……誰に」
「オレに」
ニコッと微笑んで、電蔵は自分の鼻を指差した。
「……なんで言わなきゃいけないんだよ」
「……練習だろ?」
悪びれる様子もない電蔵に観念して、友青はぽつりと懇願する。
目をぎゅっと瞑り、心の準備を整えた。電蔵をクラスメイトと思って。
「とっ、友達になってくれ」
「ようし。いいぞ」
精一杯の願い出に、電蔵が笑顔で了承した。
「オマエじゃねえよ」
「オレに言ったじゃないか」
電蔵がキョトンとした顔で言う。
「練習台だろ? だからオマエじゃねえって」
「オレと友達になって、友達がどういうものか学んでみればいいんじゃないかってことだが。不満か? だったら、お前さんは未来永劫一人ぼっちの恥ずかしいやつになるが」
電蔵に煽られて友青はカッとなった。




