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王様のお遊戯(あそび)  作者: 社容尊悟
第二章 落ちこぼれと青春

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酷いいじめ

 下駄箱に向かえば、春川友青という名前が消されていた。微かに字は残っているものの、心にもない酷い言葉が書かれていた。単細胞、バカ、アホ、マヌケ、消えろ、クソといった言葉だ。死ねと書かれていないだけ、まだましかもしれない。何故未成年というだけで罪にならないのか。それが友青には不思議でたまらなかったのだ。

「なんで……俺が何したって……」

 上靴もなくなっていて、ゴミ箱に捨てられていた。周りの人間を見れば、ささっと身体を隠すように、逃げる。私が犯人です、と言っているようなものだ。

 友青はゴミ箱から上靴を取り出した。なんとも言えぬ臭いがする。これはゴミ箱のゴミから漂ってくる悪臭が染みついたものだ。友青の足の臭いではない。

「くっさ」

 鼻を摘んで自身の上靴を二本指で摘み上げる。それを床に置いて、履いた。トントンと靴を揃えて、下駄箱を後にする。

 長い間行っていなかったとなると、自身の教室すら忘れるものだが、友青は覚えていた。嫌なことがたくさんあった場所だ。そう簡単に忘れることなどできない。

 六年三組に着いた。引き戸を開けると、クラスメイトが一瞬こちらを向いて、ひそひそ話を始め出した。全て友青に対する悪口。勘繰かんぐっているのではなく、実際にそうなのだ。

 友青は自身の机を探す。だが、見つからなかった。クラスメイトの男子が机の上に座っていた。友青の机だ。暫く使われていないはずの机に、落書きされたり、ゴミを置かれたりしていた。

「でよー。そこでアシュラ怪獣がやってきて……」

「まじで? おおっ、スゲェ!」

「続きは?」

「ドガーッて町をぶっ壊すんだ! 凄くね?」

 友青の机の周りに男子が群がっている。楽しそうに会話して、友青を無視している。まるでそこにいないかのように、ぞんざいな扱いを受けている。この間までいなかった人間だ。いなくとも機能している。その程度の存在。

 いつもの威勢がなくなり、友青は肩を落とした。

「何が友達だ……何が青春だよ……」

 小さな声で、両親につけられた名前の意味をなじった。そんなもの、一度たりとも手に入れたことがないのに、綺麗事を並べる親。綺麗事を言っておきながら、自分たちは悪いことは平気でする。こどもを放置して、友青の悩みも聞いてくれない。周りの人間が全て嫌で仕方ないのだ。

 友青は怒りを押し殺すような声を出した。

「……どけよ」

「……なんか、虫が喋った気がするぜ」

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