ショーツではなく、ショタだ
「平べったい顔の女子が言っていたのか。それは下品な女子だ。平べったい顔の女子には近づかぬようにしなければならんな。電蔵、忠告感謝する」
「ああ……よくわからんが、どういたしまして、だ」
王様の息子、と雖も電蔵とは血が繋がっていない。否、血などというものは電蔵たちの身体に流れてはいないのだ。
王様は出産したのではなく、力によって生み出したのだ。魔種と呼ばれるオスを。
電蔵もまた、王様のように力によって生み出す。魔天種と呼ばれるメスを。
オスによりメスが生まれ、メスはオスを生む。大量に生まれるオスは役目を果たせば、やがて消滅する。それにより、王様は古来よりメスと決まっているのだ。オスは王になれない。このようにして、王様と息子たちは相互関係を持っている。ここにいる王様は、もう消滅してしまったオスによって生まれたのだ。
「オレもやがて消滅する……」
独り言を呟いて、電蔵は王室に戻った。
「おお、電蔵。戻ったのか。遅かったな。それでショタは見つかったのか?」
「その者が言っていたショーツというものは下品だ。頭に被るものだと羽也が言っていたぞ。王様は冠だけを被っていればいい」
「ハッ? 何を言う、電蔵! わしがそんな下品なもの、欲するわけなかろう! ショタじゃ、ショタ! わしはショタが欲しいんじゃ!」
「だーかーら。それが何かと聞いているのに。お前さん、何を言ってるんだ」
「お主こそ何を言っておる? ショタは恐らく、人間じゃ! 若い女子が好きなものじゃ」
王様は両手両足を出してこどものように暴れる。電蔵も主張したいことはわかった。
電蔵は握り拳を口元に当てて、感心したようにぽつりと言った。
「ほー。若い女子は随分とまあ精力的な……」
「なんの話をしているんだ、電蔵……」
「下品な男子が好きなのだろう? そんなのを好む女子はやはり精力的だと」
「人間はそういう営みをせねばならんから仕方ないな。しかし電蔵。お主がそういうことに詳しいとは思わなかったぞ? 王様に隠し事か?」
電蔵は目を細めて、見下すように仁王立ちした。電蔵が輝いている瞬間。
「はっはーん。王様こそ息子のことをよく知らないんだなァ」
「ぬぐっ……電蔵、わしに対する当て付けか……?」
王様が悲痛な面持ちで息を荒らげる。息子に責められて、王様は悲しそうだ。
電蔵は満足げに爽やかな笑みを零す。本来の好青年っぽさを取り戻した。
「ははっ。おいたがすぎる我儘な王様には、いい薬だなっ」
「……ぬうう……わし、大ダメージ……」
王様は胸を押さえて俯いた。電蔵の笑顔にやられてしまったようだ。