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電蔵の時差ボケ
「そろそろ寝るか。もう零時を過ぎる頃だ」
久三が壁に立てかけてある時計を見て、ボソッと呟く。
「そんなに経っていたのか。ここの時間は長いと思っていたのだが……」
「時差があるところにいたのか?」
「ああ……」
「生返事だな。さっきと全く同じ答えだぞ」
「それはすまない。オレの語彙がないせいだ」
「返事に語彙なんてあるのか? バリエーションか?」
「オレは大抵、ああだけで会話できる」
電蔵は真剣な眼差しを久三に向けた。
「今度実践してもらおうか」
「そうだな。気が向いたら」
他愛もない会話をしつつ、電蔵たちは寝床についた。このまま長い夜を過ごす。
早朝に目が覚めてしまって、久三を起こしてしまったのは、言うまでもない話である。




