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王様のお遊戯(あそび)  作者: 社容尊悟
第一章 従者と少年

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それが愛

「ほう。それで」

「かぶりつきたいと思った。少年心にな」

「しゃぶりたいのではないのか?」

「しゃぶってもらいたいのは、アソコの方よ」

 久三は笑い話に持っていく。喜々として嫌らしい話をするので、久三もまだ現役だ。

「それを聞いたら、嘉世婆さんは怒るんじゃないのか?」

「わしが浮気性なのを知っていて、嘉世子は一緒になってくれた」

「器のでかい女だな」

「おっぱいは小さいが」

「妻のことを悪く言うなよ」

 愛しいから何を言っても許されるというわけでもない。配偶者に対する悪口ほど、悲しいものはないのだ。

 自分が言われてもいいから言うのではなく、思っていても口にするべきじゃない。口にせず、どこかで書き記す。妻と公言せず、他人として。プライバシーを守るために。

 そうすれば、衝突も少なくなる。耐えるくらいなら、一緒にいない方がましだ。言葉で傷つけるくらいなら、書く方がましだ。そうしたら誰も傷つかずにすむ。

 誰しも思うことはあっても、寛容な心を持つことが大事なのだ。それが大人に課せられた義務。電蔵だって、そのことはわかっているはずなのだ。

 なんでも口にしていいわけじゃないこと――。

「おっぱいは小さいわ、皺だらけだわ……重い病気にかかるわ……。本来のわしなら、介護するのも嫌になるくらいじゃ。しかしな……嘉世子にはたくさんの幸せをもらった。人を愛したいと思う気持ちをな。色んなことも教えてもらった。それが今でも忘れられん。だからこうして……面倒な介護をしているわけだ」

 久三は文句を垂れてから、嘉世子への想いを口にした。

 一生を添い遂げると約束した者の言葉だ。電蔵はしかと心に刻む。

「……そうか」

 目を閉じて胸に手を当てた。電蔵にもそう思う人がいる。

 久三の嘉世子への悪口も、電蔵が王様に言う悪口と同じだ。電蔵は久三に謝った。

「すまない。オレはまた、考えなしでお前さんを……」

「構わん。お前がそう思ったなら、素直に言えばいい。後はわしらがどうにかしてやる」

「……ありがとう、と言えばいいのか?」

「そうだな。それがいい。あまり謝るもんでもない」

 久三は微笑んだ。電蔵も心が温かくなって、顔を綻ばせた。満面の笑みだ。

「ああ……」

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