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王様のお遊戯(あそび)  作者: 社容尊悟
第一章 従者と少年

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メロンみたいな大きさだった

 今度は電蔵が呆れている。久三がほのかに頬を染めて、若かりし頃を思い出しているからだ。過去の栄光にすがったところで、過去は戻ってこない。思い出というのは、多少なりとも美化されがち。

 果たしてそれが正しい記憶なのかどうか……。

「その姉ちゃんは大層美しい娘だった」

「今はババアなんだな」

「電蔵は無粋なやつだなあ」

「仕方ないだろ。性分なんだから」

 過去形で語る時点で、そう思ってしまうのも仕様がないことではある。実際、生きていれば顔中皺だらけかもしれないから。そうでなければ骨になっているはずだ。それでもって、どこかの墓に還る。人間は死して尚、形が残るものなのだ。死因によっては、何も残らないかもしれないが――人間は死ねば骨になる。皮も肉もなくなり、生きていた頃の姿が思い出せなくなる。だからこそ、カメラというものが発明されたのだろう。カメラで撮って写真を残す。肉声だけ残しても顔は思い浮かばないのだ。

死者を思い出すため、遺影がある。

 いつかは色褪せてしまうから、残しておかなければならないものがある。

 電蔵は複雑な表情をした。必ず消滅する自身の儚い存在を、妬ましく思っているのかもしれない。あるいは、感傷に浸っているのかもしれない。

「わしが五歳の時で、その姉ちゃんは十七歳の時じゃったか……。生きてるとは思うが、めっきり会わなくなった。今どこにいるか……」

「まさか。そいつも連れてこいとか言わないよな?」

「できるもんなら、やって欲しいがな。無茶は言わん。お前がやりたいなら、そうしてもらいたいが、注文のしすぎはダメだろうに」

「ああ……オレでも音を上げるぞ……。無茶がすぎる」

 王様ならば、それも注文してきただろう。なんせ、休みなしのブラックな世界だから。電蔵だけにはブラックな世界なのだ。他の息子たちはほぼ休みのようなもの。

「姉ちゃんはな、わしがおっぱいを見せてくれと頼んだら……いいよと言ってくれた」

「まさか、王様と一緒なのか!? ショタが好きとかいうやつか?」

「は? ショ……とは、なんじゃ」

「話せば長くなる。続けてくれ」

「……そんなに長くなるか」

「ああ。王様の話をすることになるだろうからな」

 電蔵はコホンと咳払いした。王様の話をこの家に持ち込みたくないのだ。

「凄くでかかった……それはもう、メロンみたいな大きさだったな」

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