甘いマスクでも口から出た言葉は
「……そこまでは言わんが……それはもう、犯罪なんじゃないのか……?」
セクシャルハラスメントや侮辱罪などに当たるだろう。訴えれば久三が勝利すること間違いなし。
「まあいい。うんこの話はこれで終わりにしよう。きりがない」
「そうだな。元々わしが掘り下げた話題じゃし」
「いつか、爺さんに最高級のうんこを食わせてやるから、長生きしろよ」
電蔵は目を煌びやかにして、久三に宣言した。
「早う死にたいわい」
久三の言葉で電蔵は笑いすぎてむせた。
「冗談に決まってるだろう。何を本気になってる」
「真顔で言われたら誰だって本気で言っとるようにしか聞こえん」
久三の言い分は正しい。
「真顔で言った方が面白いじゃないか」
「それはそうだが……」
電蔵の言い分も間違っていない。
そう。笑って冗談を言うより、真顔で冗談を言った時の方が衝撃は大きい。何より、そんなことを口にしないような顔をしているのも、笑わせる要素である。
俗に言うベビーフェイス、甘いマスクだ。
その顔で汚い言葉も吐き、やらしいことも平気で口にするのだ。ギャップも大きい。
それでも笑わない久三は、ツボが浅くないタイプである。いや、笑わせる方が先に笑ってしまえば、笑えなくなるということを電蔵は考慮していなかった。
本当にどうでもいいことだが、電蔵と久三という名前はちょっと似ている。しかし、性格は似て非なるものである。久三は、冗談は一切口にしない。
そして冗談を笑わない。
「お前さん、笑うことを忘れたか?」
「呆れて物も言えん状態だな」
「オレが幼稚だと?」
「うんこだの、おっぱいだのと口にするのは、ガキの証拠だ」
「おっぱいは言ってないんだがな……」
少しだけ脚色されているが、似たり寄ったりなので電蔵は小声で抗議する。
「ガキにはおっぱい晒せばいいと思ってる女がいっぱいいるからな」
「今その話は関係ないと思うがなァ。久爺さんよ。それはどこから得た情報だ?」
「ああ……若き日のことだ。わしが小さい頃、おっぱいを見せてきた姉ちゃんがいてな」
「……ストリッパーか?」




