まるで小学生男子の低レベルな会話
「そんなことで熱く語られても困るな、しかし」
電蔵が真面目な顔でふざけたことを言って、笑いを狙っているようなポーズでいた。尚もヨガポーズのままだ。電蔵はたまにこういう茶目っ気を出すことがある。
「お前のさっき言ったこと、一体どんな状況のことを言ってるんだ? うんこぶっかけられるのは、犯罪だろう。そんなこと、されたのか?」
「例えばの話だ!」
「例えにそんな汚いもんを持ち出すな!」
通常、大便は汚いものとして扱われる。幼いこどもがうんこと連呼するならば可愛らしいものだが、そうでない者が口にすれば下品と言い捨てられ、蔑まれる。しかし下ネタというのは、万国共通の笑いのネタである。TPOさえ間違えなければ、笑えるものだ。本当に嫌でなければ。
大便は老廃物と要らなくなった栄養が含まれているので、決していいものでもない。あれを食べれば、大抵の人間は病気になってしまう。そうでなければ病気の可能性があるので、要注意だ。体重の増減にも気を付けるべきであろう。
「なんだと? うんこが出ないやつに向かって、汚いとはなんだ。オレはうんこを神聖なものだと思っているぞ? あれは……人間の食べ物を茶色のものに変色させただけだろう? ケツから出てきたものが何故そんなに汚いと言う? 排泄物だからか? ケツが汚いからか? 汚くはないだろう」
大便は決して神聖なものではない。一部の者に絶大な人気を誇っているだけだ。
「ならお前、あれ食ってみろ」
久三はげんなりした顔で電蔵に命令した。
「食うのと侮辱するのとでは、訳が違うぞ。第一、神聖なうんこを食っていいわけがない」
「今逃げたな?」
「ならばお前さんが食えばいいだろう」
「食えるわけあるか!」
「戦場では食料がない時、尿を飲み、うんこを食べるもんじゃないのか。その習慣はまだ残っているんじゃないのか?」
「戦場に行っとらんのに、うんこ食うかー!」
久三の絶叫が響き渡る。近所に大迷惑だ。
「何故うんこの話でそんなに怒る?」
「お前、あれか。あれだな。カレーが出た時、『あ、うんこ色』とか言うやつだな?」
「何故わかった……!」
図星だった。電蔵のデリカシーのなさは、小学生の男子並である。
「わしが息臭ければ、加齢臭だの死臭だの腐敗臭だのと言うんじゃないか?」




