王様はずるい
「わからん。わしはショタを所望する。ショタはいいと平べったい顔の女どもが言っていた。女どもはイギリスに旅行中らしい。電蔵。今すぐショタを連れてこい」
わかっていないものを連れてこいと命令されている。電蔵は呆れ果てた。
「そんな無茶な。オレにはできん。わからんものをどうしろと言うんだ? お前さんはそれでもオレの生みの親か! なあ、戦闘にも助っ人くらいくれよ、王様ァ。一人で全部するには大変なんだ。オレのことをちょっとでも思ってくれるなら……」
いくつか要求をしても、我儘な王様には通用しない。駄々を捏ねて玉座で脚をばたつかせる。いつも暴れているのは王様の方。電蔵は理不尽だ、と呟いた。
「わしの息子じゃないか! どうにかせい!」
「あー疲れた。王様の我儘には呆れる。……息子はオレだけではないじゃないかァ」
「そうじゃ。わしの息子はこの国のオス、全部だな!」
王様は手を広げて、無邪気に笑った。電蔵は目を細めて、笑顔を引き攣らせる。
「オレ以外の息子を使ってくれると、もっとありがたいな」
「わしのお気に入りの息子じゃ! デンゾー、デンゾー、腹減ったぞ! 何か食わせろ!」
「だからって、全部押し付けることないだろう。何が理由だ」
「ふっふっふ……それはだなあ」
王様は不敵な笑みを浮かべた。電蔵は苦い顔をする。
「秘密じゃあ」
王様はうっとりと顔を綻ばせ、両の頬を手の平で覆った。
「答えるべきだと思うがなァ。王様はそういうところ、らしくない」
「全てお主のためを思ってのことじゃ。許せよ、電蔵」
王様は眉尻を下げて、片手を出した。ごめんと謝る時に、いつもする仕草だ。
「ああー。そういうのはずるいな」
電蔵が困ったように笑うと、王様は胸を張って腰に手を当てた。
「ふふん。電蔵よ、王様とはずるいものだ」
王様の所望するよくわからないものを探しにいくことにした。
王室をうろちょろと動き回り、他の息子たちと対面。挨拶を交わす。
「なあ、お前さん。ちょっと訊きたいことがあるんだが」
「なんだよ」
「王様が連れてこいと言っているショ……ショーツとかいうのは、なんだと思うよ?」
「そりゃお前……頭に被る下着のことだろ?」
「あんれまあ。そうなのか? 王様は人間の類を連れてこいと言ったのではなく? 平べったい顔の女子が話していたと言っていたが。その者は、なんと下品な」