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王様のお遊戯(あそび)  作者: 社容尊悟
第一章 従者と少年

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憎しみは何も生まない

 王様は頭を抱えて、脅えたように震え出す。目の光が消え失せ、王様はビクビクしている。王の力を以てしても、変えることのできない決まりに恐怖、おののきを感じている。

「……王様……」

「……怖い。怖い……皆が消えるのが怖い……。わかっていても耐えられない……」

「王様。落ち着け」

 庄時が声をかけても、王様は震えたまま「怖い」とぼそぼそ呟いている。

「消えて欲しくない……」

 王様が涙を流す度に、庄時は傷ついたような顔をした。

「……優しいんだな。王様も……あいつも……」

「……怖い」

「俺はお前らみたいに優しくなんかない。電蔵を羨ましいと思ったし……憎んだりもしてた……。今もちょっとだけ、あいつが羨ましいよ。ずるいと思う。こんなに母親に愛されてさ。俺だってもっと愛されたいと思ってる……。もっと頼って欲しいのに」

 庄時の口から思いがこぼれ落ちる。

「……庄時……」

 王様がハッと目を見開いて、庄時を見た。

「でもあいつが特別なのは……最初からわかってた。なんか、あいつは俺たちとは雰囲気が違うしな。よくわかんねえけど、なんか違うんだ。あいつは」

 悔しげな微笑みを浮かべて、庄時は言う。

「……すまない。庄時……わしが不甲斐ないから……」

「……王様が悪いんじゃない。能無しの俺が悪いんだよ。こんないやしい気持ち持ったやつなんかが、寵愛ちょうあい受けられるはずなかったんだ。電蔵は俺たちのことを全く憎んだりしていなかったのにな……。俺たちはあいつを憎んでいたけど……」

 庄時は自らのあやまちを認め、自身の醜さを吐露とろし、懺悔ざんげするように吐き出した。

「……お主たちを使ってやろう……」

 王様は庄時の思いを受け止めて、そう宣言した。

「ありがとう、王様」

「……わしはお主たちに礼を言われるようなことは……何もしとらんよ」

 王様は涙ぐんで庄時に言うのだった。



 電蔵のいる日本。そして久三と嘉世子のいる家。電蔵は皿洗いの後、掃除をし始めた。

 しゅうとめのように指で埃を取ってふっと息を吹きかける。電蔵は少しだけむせた。

「……埃がたくさんあるな」

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