消えて欲しくないから
「これでわかったか?」
「……つまり、王様がいないと本当に電蔵は何もできないんだな?」
「そうじゃ。力の解放もわしの許可がなきゃできない」
「俺と違って……」
「そうじゃな……お主たちはわしの許可がなくても、使えるものな。口上で許可を得たと言ってしまえば、いくらでも自由に使える……」
「……っ」
王様の悲しそうな顔を見て、庄時は心が痛んだ。
「でもそれを悪いことには使うな。わしが見ているところなら、わしが責任を取る。じゃが、わしの見えないところで使えば、どうなるか……庄時、お主がよく知ってるな? 力を使う時と場所は考えなきゃダメなんだぞ。じゃなきゃ、二度と帰ってこれなくなる」
「……わかった……」
庄時は王様に頭を下げた。
「……それと、やつのことはムカつくと思うが、気にかけてやってくれ」
「……なんで俺がそんなことしなきゃいけないんだよ」
「お主たちより目にかけていて悪い。じゃが、電蔵はお主たちより弱いんだ。強く見えるのは錯覚で、やつは苦労しておる。お主たちよりよっぽどな」
王様の所為でもある。
「……なら、もう電蔵には頼るなよ。俺たちを頼ればいいだろ。なんで電蔵ばっかり」
「そうしないと……消えてしまうかもしれないじゃないか……」
王様は髪を振り乱して、涙を飛ばした。水滴が舞う。
「……なんで」
「お主たちを放っておいても、お主たちは消えない。まだ役目を果たしていない。だが、電蔵はどうだ? わしが頼らなければ消えてしまうんじゃないか?」
「……」
「それが怖い……」
愛しいからこそ、我が子が消えるのを見るのは辛い。王様の肩の震えは、そう物語る。
「俺たちだって、いつ消えてもおかしくないだろ?」
「そんなことはない。お主たちは必要なんだ。わしにとっても、この世界にとっても必要なんだ。それを証明されているだろう? 消えるはずない」
「……そんなの、なんでわかるんだよ」
「わかるんだ。我が子が消える瞬間、それを歴代の王は全て感じ取れた。そう聞いている。わしもまた同じなんだ……誰かが消える時、怖気が走る。それは尋常でない怖気だ。思い出すだけでも、気がおかしくなってしまう……」




