新戦争(ニューゲーム)
黒い雷を発生させたまま、電蔵は王室から出た。間違って入ってきた者の元に向かうのだ。階段を下り、電蔵はその者たちと対峙する。
彫りの深い目鼻。白い肌。金の髪と青い瞳。顔立ちからして、イギリス人の男のようだ。
驚いているイギリス人は綺麗な英語で話した。おまけに速い。
「だ、誰だ……変な髪だ」
「……お前さん。何を言ってるのか、わからないな。ゆっくり喋ってくれないか」
ニュアンスはわかるものの、電蔵は本場のイギリス人の言葉はわからない。
「ここはお前さんが来ていい場所じゃない。立ち去るんだ。さもなくば……」
「何を言っている?」
「わからない。なんだ、この男は」
互いに言葉が通じない。男たちは苛立っている様子だ。
電蔵はカードを見せびらかし、ニ、と笑った。瞳には妖しさを滲ませている。
カードからは今も尚、黒い雷がパリッ、パリッと音を発生させ、光を生んでいる。
「始めるか? ニューゲームを」
「この男、何をするつもりだ」
「遊びではないのか?」
「スターティング・ニューゲーム。ニューゲームとは新戦争のことだ。遊戯だが、遊びではない。王様の編み出したお遊戯。そしてオレは王様の玩具だ」
カードをかざし、戸惑う男たちに黒い雷を放つ。男たちは気絶した。電蔵は彼らを外の世界へと運ぶ。ここが危険であると認識させ、もう二度と立ち入らないように。元の世界へと戻すために。敢えて悪者になって、彼らを守るのだ。この世界は、一般人の来るところではない。それを体感させて、追い出す。
損な役回りをさせられていると電蔵は息を吐き、カードに念じた。
「眠りにつけ。黒雷休眠」
シュル、と黒い雷が収束してカードに封じられた。電蔵はポケットに仕舞う。
「……はあ。オレもちょっとは楽しみたいもんだ」
電蔵は今日も王様の遊戯に付き合わされる。息子であるが故に、損な立場だ。
そんなある日のこと。王様に呼び出された電蔵は、王様の元に向かう。
「呼んだか?」
「電蔵。ショタはいいぞ」
玉座に座ったまま、王様は真剣な目で言い出した。目が燦然と輝いている。
「しょ……? またそんなおかしな言葉を覚えて……どういうものなんだ?」