王様と庄時
嘉世子が頷けば、電蔵はハッとしたように目を見開いた。タオルを握り締めて。
「そうか……」
電蔵の声が震えた。
ところ変わってブラックスフィア王室。時刻は夜の八時頃。
王様は下界の様子を千里眼で見て、歯軋りした。
「……電蔵め……。新たな家族をゲットしおって……わしというものがありながら……」
半ば破門をしたような形で電蔵を日本に行かせたのに、王様はそれを棚に上げて忌々しげに呟く。憎々しげに恨めしげに、瞳に映る電蔵に念を送った。
王室のドアを叩く音がし、庄時が姿を現した。
「王様。俺を頼ってくれ」
「庄時か。構わんぞ。何か用か?」
王様の物言いは酷く冷たいものだった。電蔵にはそんな言葉をかけたことはないのに。
庄時は舌打ちをしそうになったが、堪えた。
「……王様は電蔵じゃないとダメなのか?」
「……そんなことはない。じゃが、わしは電蔵が大好きなんだ」
「俺のことは大好きじゃないのかよ」
「お主のことも大好きじゃ。でも電蔵は特別なんだ。なんでかわかるか?」
王様の問いに、庄時は歯軋りをしながら答えた。
「……カッコイイからか?」
「お主もカッコイイぞ?」
そんなお世辞はいいと庄時は言った。王様は世辞ではないのにと不満そうに口を尖らす。
「電蔵はな……お主たちより力を持ってる。生まれた時から……そうだったんじゃ。じゃが、やつは力を持っているからこそ、心がすぐ揺らぐ。力に溺れたり、慢心したりする。他の者からも羨ましがられ、恨まれる。落ちこぼれていないからこそ、心が弱いんだ」
「……言ってる意味が、わからない」
「要するにだな。奴にはわしがいないとダメなんじゃ」
「……」
「心が乱れてしまうから、力の制御ができない。そこでわしが考えてやった。力を封印するというやり方を、な。奴はカードを持ってるじゃろう? あれはわしが封印してやったんだ。わしがやつに枷をつけてやった。そしたら、身体から徐々に力を失っていった」
「……あ……」
電蔵が持ち歩いているカードを思い出して、声を漏らした。




