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王様のお遊戯(あそび)  作者: 社容尊悟
第一章 従者と少年

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久三(きゅうぞう)と嘉世子(かよこ)

 老爺の妻は皺だらけの老婆だった。背筋も曲がったままで、自分一人の力では歩くこともできない。老爺に支えられて立ち上がった。しかし震えている。老爺とは同い年だそうだが、老爺よりも年老いているように見えた。

「わしの妻、嘉世子かよこじゃ」

「……うう」

「なんだ?」

 唸るような声を出して、嘉世子は笑った。電蔵はそれがなんだかわからず、反射的に問うたのだ。

「……嘉世子は、ちょいと重い病にかかっててな」

「……そうか。大事にしろ」

「……うう」

「…………それは、治るのか」

「……わしの力ではどうにもできねえ。医者の力でも……わからねえことよ」

 老爺は唇を噛み、悔しさを露わにした。電蔵は何を思ったのか、表情を変えずに老爺に訊いた。

「爺さん。お前さんの名は」

「わしは久三」

「キュウゾウ。キュウ爺さんだな。オレは電蔵だ。紫水電蔵」

「なんじゃその呼び名は。お化けみたいだな。デンゾウじゃな」

「宜しくな。キュウ爺さんとカヨ婆さん」

「宜しくデンゾウ」

「……うう」

 老爺の名は久三。老婆の名は嘉世子。電蔵の義理の祖父と祖母になるのだろうか。

 年齢を考慮すれば、母である王様の方が祖母なのだが。

 電蔵は苦笑した。王様のことを思い出して辛くなったのを笑い飛ばした。


 久三たちとの生活が始まった。電蔵はこれから世話になるので、家事を覚えることにしたのだ。

 残念ながら電蔵は食べ物を食べないので、料理を作ったことがない。電蔵の力で部屋も物も綺麗にできるので、掃除をしたこともない。服は繊維でできていないので、洗濯をしたこともない。何もかもをしたことがない。する必要がなかった。

 人間が生活していく上ですることのほとんどを、電蔵はしたことがない。

 なんでも簡単にこなせていた電蔵が、かなり戸惑いながら家事をすることになった。

「……電蔵。お前、もういいぞ?」

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