表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王様のお遊戯(あそび)  作者: 社容尊悟
第一章 従者と少年

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/104

電蔵、養子になる

 うまくいきすぎだとは思うものの、電蔵はあらゆる事象に感謝した。

 道中、電蔵と老爺は話しながら歩いた。

「何故あそこに?」

「ああ……。ちょっとした手続きをな。住民票を必要としていたんだ」

「ほう……?」

 住民票がなんなのかわからなかった電蔵は、その先の話を適当に聞き流してしまった。

 電蔵は老爺に感謝したが、恩を返すにはどうすればいいかを訊いた。

「何。わしらの老後、いや最期を見届けてくれればいいってもんだ」

「……お前さん、死ぬのか」

「まだ死なねえ。だから一生を添い遂げてくれるような息子か孫が欲しかったんだ。家内がそう言っとった。金が欲しけりゃくれてやるから、わしんとこ来てくれるやつはいねえかって探してたんだよ」

「添い遂げる……」

 電蔵は身震いした。ブラックスフィアとは時間の流れが違うので、本当にここで消滅するかもしれないと思ったのだろう。だが電蔵が生まれた意味はそんなものではない。王様があれだけ目にかけるほどなので、電蔵にはもっと大それた役目がある。世界のことわりを揺るがすほどの、大きな役目が。そう考えるのが正しい。

「どのくらいになる?」

「そりゃわからん。今日死ぬかもわからんし、明日死ぬかもわからん。もしかしたらもっと先になるかもしれねえ。そんなに長いこといるのは嫌か?」

「そうだな。オレにも帰る場所がある……少しだけなら構わんが、死ぬまで面倒見ることはできん。すまないな、爺さん」

 王様には帰ってくるなと言われていたが、電蔵は帰る気だ。王様だって、本気で言ったのではないだろう。カッとなって言ってしまったことなのだ。

 生まれ育った場所、というのはそれほど特別なのだ。ほぼ全ての人にとっても。

「……そうか。それでもいい。家内が喜んでくれるなら、それでいい。お前を息子のように愛すじゃろうな」

「……お前さん、妻との間に子がいないんだな」

「……ああ。とっくに逝っちまった」

「オレはお前さんとこの亡き息子の代わりにはなれんぞ。身代わりなんてのはゴメンだ」

「そんなことはさせねえ。安心しやがれい。いるだけでいいんだ。楽だろう」

「そうだな。楽でいい」

 電蔵は悲しげに微笑んだ。それを老爺がどう受け取ったかはわからない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ