ゲームの世界、ブラックスフィア
ブラックスフィアは小さな世界。ゲームをしなければ滅びゆく世界。ゲームが全てを支配する。ゲームを司るのは王様。王様の息子たちはそのゲームを行う。
黒い海に浮かぶ城。黒い雲に隠された町。暗黒に染まりつつある、小さく脆い世界。
扉を開ければそこは地球の国。繋がっているのだ。
言語はそこから取った。彼らはうまく聞き取れなかったので、適当に変えた。
――そこはイギリス。
王室には、紫水電蔵と王様の二人しかいない。他の者は別室で休んでいる。
紫水電蔵は王様の側近であり、息子である。水紫色の髪と赤黄色の瞳を持つ、魔種と呼ばれるオスの人種。青年といったところだが、実際の年齢は不明。
一方の王様は、赤桃色の髪に金紫の瞳を持つ、魔天種と呼ばれるメスの人種。こちらは少女といった風情だが、電蔵と同じく実年齢が定かではない。
「おい王様ァ。用がある。ちょっといいか」
黒と赤の二色を基調とした、軍服を模した衣服を身に着けているのが電蔵。
電蔵は棒立ちで王様に意見した。跪くでもなく、進言でもない。対等の立場としてそこにいる。ここには、そういう格式ばった規則は存在しないのだ。
電蔵の好青年然とした顔を、王様は真剣に見つめた。
「なんじゃ。急ぎか」
「おうさ。今日入り込んだ者がいる。オレの感覚がそう告げているんだ。二人の人間だ。間違って開けてしまったんだろう。どうする?」
「本当か、電蔵。お主にやってもらおうかのう」
玉座に座っていて、王冠を乗せている王様。身に着けている衣服は薄い着物。洋風で赤いドレスだ。簡素なもので、こども用のものにも見える。王様は背が低い。
「……またァ? はあ。息子遣いが荒い。許可を」
「よし。許す。わしが責任を取ってやろう」
王様がバッと手をかざす。リボンで一つ結びにしていた長髪が揺れた。
優しげな目を緩ませ、電蔵は微笑んだ。
「ありがたいが、ありがたくないな」
「暴れてこい、電蔵」
「ラジャー」
電蔵はズボンのポケットからカードを取り出した。指に挟んで、念じる。
「呼び覚ませ。黒雷招来」
呟くと、カードから黒い雷が発生。これはカードに封じられた力。電蔵の持つ力である。